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「損」の痛みは「得」の喜びより2倍重い

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利益の喜びよりも、損失の痛みの方が強烈である

火曜の朝、少し残酷なギャンブルを提案しよう。コイントスをして、表が出れば12,000円もらえるが、裏が出れば10,000円払わなければならない。期待値を計算すればプラス(+1,000円)になるこの賭けを、あなたなら受けるだろうか? おそらく、多くの人は「NO」と答えるはずだ。なぜなら、1万円を失う心理的な痛みは、1万2千円を得る喜びよりも遥かに大きいからだ。

これこそが、ダニエル・カーネマンが提唱しノーベル経済学賞を受賞した「プロスペクト理論」の核心、すなわち「損失回避」の法則である。研究によれば、損失の痛みは利得の喜びの約1.5倍から2.5倍も強い。我々の脳は、何かを得ることよりも、今あるものを失わないことに必死になるよう配線されている。この非対称性が、人生のあらゆる選択を保守的で臆病なものにしているのだ。

「参照点」が変われば、幸福度も変わる

プロスペクト理論のもう一つの重要な概念は「参照点」だ。年収が500万円の人は、600万円になれば喜ぶが、かつて年収1000万円だった人が600万円になれば不幸を感じる。客観的な金額(600万円)は同じでも、どこを基準(参照点)にするかによって、価値の感じ方は劇的に変わる。

この参照点は容易に操作される。現状維持を好むのも、今の状態が参照点となり、そこからの変化を「損失」と捉えてしまうからだ。新しい挑戦や転職をためらうのは、得られる可能性のある未来の利益よりも、失うかもしれない現在の安定(たとえそれが不満だらけでも)を過大評価してしまう脳のバグのせいである。

投資やギャンブルで泥沼にはまる心理

損失回避性は、逆説的に「大きなリスク」を誘発することもある。確実な損(損切り)を確定させる苦痛から逃れるために、一発逆転を狙ってさらに無謀な賭けに出てしまうのだ。投資で含み損を抱えたまま塩漬けにしたり、ギャンブルで負けを取り返そうとして借金を重ねたりするのは、すべて「損失を確定させたくない」という脳のシステム1(速い思考)の悲鳴によるものである。

賢明な投資家や経営者は、この心理バイアスを理解し、機械的なルール(ロスカット)を設けることで感情を排除する。損をすることは、無能の証明ではなく、単なる確率上のコストに過ぎない。しかし、我々のプライドと損失回避の本能は、その単純な事実を認めることを頑なに拒絶する。

損失の恐怖を手なずけ、合理的なリスクを取れ

この本能に逆らうには、視点を「狭いフレーム」から「広いフレーム」へと広げる必要がある。一つ一つの勝負の結果に一喜一憂するのではなく、人生全体を「多くの賭けの連続」として捉えるのだ。トータルでプラスになればいいと考えれば、個別の小さな損失は許容できる誤差の一部となる。

火曜日の朝、もしあなたが何かの決断を先送りにしているなら、自問してほしい。「私は失敗を恐れているのか、それとも単に『損をした気分』になるのを恐れているだけではないか?」。損失の痛みを過大評価する自分の脳を疑い、期待値という冷徹な計算機を信じること。それが、臆病な現状維持から脱し、勝算のあるリスクへと踏み出すための唯一の鍵だ。

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