「ときめき」という冷徹な裁判官
ファンシーな言葉に騙されるな
こんまり(近藤麻理恵)氏が提唱する「ときめき(Spark Joy)」という言葉を聞くと、多くの皮肉屋は眉をひそめる。 いい歳をした大人が、モノに対して「ときめく」などと、何をメルヘンなことを言っているのか、と。
だが、この言葉の響きに騙されてはいけない。 こんまりメソッドにおける「ときめき」とは、感情に流されてモノを溜め込むことを推奨する甘い言葉ではない。 むしろ、その逆だ。 それは、あなたの生活に入り込んだノイズを検知し、容赦なく排除するための、極めて鋭利な「BS(Bullshit:くだらないもの)探知機」なのだ。
「使える」と「愛せる」の違い
我々はモノを捨てようとするとき、無意識に「理屈」で防御線を張る。 「まだ着られるから」「高かったから」「いつか使うかもしれないから」。 これらはすべて、思考停止の言い訳だ。 機能として「使える」ことと、あなたがそれを「愛して使いたいか」は、まったく別の次元の話である。
著者は言う。「触った瞬間にときめくか?」。 その判断に要する時間は、わずか数秒。 惰性で着ているヨレヨレの部屋着、義理でもらった趣味の合わないマグカップ、読み返すことのない積読本。 それらに触れたとき、心は沈黙するか、あるいは微かに重くなるはずだ。 それが答えだ。 「ときめき」というフィルターを通せば、それらはすべて「不要なゴミ」として即座に判定される。そこに「もったいない」という論理が入り込む余地はない。
裁判官はあなた自身
このメソッドの恐ろしいところは、その判定を他人に委ねられない点にある。 「捨てるべきか、残すべきか」の基準は、世間の流行でも、ファッション誌のアドバイスでもない。 あなた自身の直感だけだ。
現代社会において、我々は自分の感覚を麻痺させて生きている。 他人の評価を気にし、損得勘定で動き、自分の「好き」という感覚すら見失っている。 モノを一つ一つ手に取り、自分の胸に問いかける作業は、その錆びついたセンサーを研ぎ直すリハビリテーションでもある。
今日のコツ:ノイズキャンセリング
まずは、財布の中のレシート一枚から始めてみるといい。 それを持っていることで、あなたの人生は少しでも上向くか? 心が軽くなるか? もし答えが「No」なら、それはあなたの人生におけるノイズだ。 さっさとゴミ箱へ放り込み、視界と心をクリアにする。 「ときめき」とは、幸福な人生を送るための、最強のノイズキャンセリング機能なのだ。
