的確なアドバイスが人を遠ざける【『Validation』1/6】
なぜ正論が相手の心を閉ざしてしまうのか
ビジネスの現場において、同僚や部下から仕事の悩みを相談されたとき、私たちは良かれと思って即座に的確なアドバイスを送ろうとする。こうすれば効率が上がる、そのやり方はここが間違っているといった具合だ。悩んでいる時間は非生産的であり、一刻も早く解決策を提示してあげることこそが、相手に対する最大の誠意だと信じ込んでいるからである。
しかし、その論理的で完璧なアドバイスが、相手の心を軽くするどころか、かえって相手を怒らせたり心を閉ざさせたりしてしまった経験はないだろうか。解決策を提示された相手は、自分の苦しみを軽くあしらわれたように感じ、防衛線を張って素直に言葉を受け取らなくなってしまう。私たちが良かれと思って振りかざす正論は、時として相手を深く傷つける鋭い刃となっているのだ。
解決策より先に感情の存在を認めよ
『Validation』著者で臨床心理学者のキャロライン・フレックは、このコミュニケーションのエラーを防ぐための核心的なスキルとして、バリデーション(承認)の概念を提唱している。バリデーションとは、相手が今抱えている感情や思考をジャッジせず、ただそれがそこにある事実として正当なものだと認めるプロセスである。
同氏によれば、人間は自分の感情が他者に理解され、受け入れられたと感じるまでは、いかなる論理的な解決策も脳が受け付けないようにできている。相手が「プロジェクトがうまくいかなくて辛い」とこぼしたとき、「こうすればうまくいく」と解決策を急ぐのは、相手の辛いという感情を無視して消し去ろうとする行為に他ならない。まずは「それは確かに辛い状況だね」と、相手の感情の居場所を作ってあげることが、すべての対話の絶対的なスタートラインなのである。
感情を肯定することは相手を甘やかすことではない
ビジネスパーソンの中には、相手のネガティブな感情を承認することは、ただの傷の舐め合いであり、相手を甘やかすことになると警戒する人もいるだろう。しかし、承認することは、相手の意見に全面的に同意することでも、相手の誤った行動を許容することでもない。行動の善悪は一旦脇に置き、その人がその瞬間にそう感じたという内面的な事実だけを肯定する、極めて高度で知的なスキルなのである。
自分の感情が正当なものとして承認された相手は、強烈な安心感を得る。防衛のために張り詰めていた神経が落ち着き、脳の論理的な思考回路がようやく働き始めるのだ。本当に相手の行動を変容させ、有益なアドバイスを届けたいのであれば、急がば回れで、まずは徹底的に相手の感情をバリデーションする必要がある。承認という土台のないところに、どんなに優れた解決策という家を建てようとしても、必ず崩れ去ってしまうのである。
正論を捨てて相手の心を動かせるか
あなたが相談者に対して突きつけているその的確な解決策は、相手を救うためだろうか。それとも、単にあなたが早く問題を片付けてすっきりしたいだけなのだろうか。私たちが複雑な人間関係の中で真のリーダーシップを発揮するためには、相手を論破しようとする正論を完全に捨て去り、まずは相手の感情に深く寄り添うマインドセットが不可欠である。
相手との信頼関係を再構築し、真の意味で人を動かすための第一歩として、相手の自己重要感を満たすことこそが最大の求心力になると証明した古典的名著、デール・カーネギーの『人を動かす』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。あなたはまだ、相手の感情を無視した正論の暴力で、人をコントロールできると信じきっているのだろうか。
『Validation』シリーズ (全6回)




