睡眠を軽視する社会の異常性【『睡眠こそ最強の解決策である』5/6】
睡眠を削ることを美徳としていないか
現代のビジネス社会では、睡眠時間が短いことをまるで勲章のように語る風潮がいまだに根強い。ショートスリーパーであることを有能さの証明とし、夜遅くまで働き、朝早くから活動する人間が高く評価される。私たちはいつしか、休むことなく稼働し続ける社会のシステムに合わせて、自分の睡眠時間を削ることを無意識のうちに正当化している。しかし、この社会全体の睡眠軽視の文化こそが、私たちの心身のパフォーマンスを確実にむしばんでいるのだ。
意図的に睡眠を削る唯一の生物
マシュー・ウォーカーは著書『睡眠こそ最強の解決策である』の中で、正当な理由もなく意図的に睡眠を削る生物は、地球上で人間だけであると鋭く指摘している。自然界において、睡眠は無防備で危険な状態であるにもかかわらず、進化の過程で決して排除されることはなかった。それは、睡眠が生命を維持し、パフォーマンスを発揮するために絶対的に不可欠な機能だからである。人類は文明を発展させる過程で、この生物学的な絶対ルールを無視し、自らを実験台にして、取り返しのつかない代償を払い続けているのだ。
その代償は、個人にとどまらない。世界保健機関(WHO)は、睡眠不足を先進国全体に蔓延する流行病であると警告を発している。特に日本やアメリカ、イギリスなどの国々においてその傾向は顕著であり、睡眠軽視が莫大な経済的損失を生み出していると指摘されているのだ。企業や社会が従業員の睡眠を削って短期的な利益を追い求めることは、長期的には自らの首を絞める致命的なコストになっているのである。
文明の利器が体内時計を狂わせる
私たちが自然な睡眠をとれなくなった最大の原因は、現代のテクノロジーと生活環境の劇的な変化にある。夜になっても沈むことのない人工的な光、常にブルーライトを放つスマートフォン、そして二十四時間いつでもつながるインターネット。これらはすべて、私たちの脳が持つ本来の体内時計を狂わせ、夜になっても睡眠を促すホルモンの分泌を強力に妨げてしまう。私たちは、石器時代から変わらない古い身体のまま、進化のスピードをはるかに超えた異常な光の環境の中で生きているのである。
生物としての自然なリズムを取り戻せるか
あなたが睡眠を削ってまで社会のスピードに合わせようとするその努力は、生物としての自らの限界を無視した危険な行為に過ぎない。私たちが真の健康とパフォーマンスを取り戻すためには、現代社会の異常な環境を自覚し、意図的に光やテクノロジーを遮断して自然なリズムを取り戻すマインドセットが不可欠である。
そのための具体的な指針として、古代の環境に最適化された人間の身体と現代社会のズレが生み出す文明病の正体を暴き、科学的に本来の体調を取り戻す方法を説いた名著、鈴木祐の『最高の体調』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。夜のスマートフォンを置き、部屋を暗くして眠ることは、非効率に見えて実は最も合理的な選択だ。あなたの身体は、そのシンプルな行動を待っている。
『睡眠こそ最強の解決策である』シリーズ (全6回)




