気絶することと眠ることは違う【『睡眠こそ最強の解決策である』6/6】
お酒や薬で眠りをコントロールしようとしていないか
プレッシャーの大きい仕事が続いたり、翌日に重要なイベントが控えていたりする夜、私たちはなかなか寝付けない焦りから、お酒の力に頼ったり、睡眠のための薬に手を出したりすることがある。ベッドの中で眠れずに時間が過ぎていくことは非常な苦痛であり、何らかの物質を使ってでも強制的に脳のスイッチを切りたいという衝動に駆られるからだ。
寝酒という言葉があるように、日本では特にアルコールを睡眠導入剤代わりに使うことが半ば習慣化している。しかし、一時的な入眠のしやすさと引き換えに、私たちが心身の健康という取り返しのつかない資産を削り取られている事実に気づいている人は驚くほど少ない。
気絶することと眠ることはまったく違う
マシュー・ウォーカーは著書『睡眠こそ最強の解決策である』の中で、アルコールや睡眠薬がもたらす状態は、決して自然な睡眠ではないと強く警告している。これらの物質は脳の皮質を強制的に鎮静化させているだけであり、厳密に言えば軽い麻酔状態、あるいは気絶に近い状態を作り出しているに過ぎない。このような人為的な鎮静状態では、脳が記憶を整理したり、感情を修復したりする本来の複雑な睡眠の波を作り出すことができないのである。
自然な睡眠のアーキテクチャを破壊する
特にアルコールは、眠りにつくのを早めるように見えて、実際には夜間の睡眠を細切れにし、全体的な質を著しく低下させる。ウォーカーによれば、アルコールが体内で分解される過程で交感神経が刺激され、自分でも気づかないうちに何度も短い覚醒を繰り返すことになる。睡眠の連続性が絶たれることで、朝起きても全く疲れが取れていないという悪循環に陥るのだ。
さらに致命的なのは、感情の浄化や創造性に不可欠なレム睡眠を強力にブロックしてしまうことだ。アルコールによって失われたレム睡眠は、後からどれだけ長く眠っても完全に取り戻すことはできない。物質で無理やり意識を失わせる行為は、表面上は眠っているように見えても、脳が必要とする高度なメンテナンス作業である睡眠の構造を根底から破壊しているのである。
コントロールを手放し自然な眠りに委ねられるか
私たちが眠れない本当の理由は、仕事の不安や明日への緊張によって、交感神経が過剰に興奮し続けていることにある。この興奮状態を物質で強制終了させるのではなく、いかにして自然にクールダウンさせるかが鍵となる。眠ろうと力技でコントロールしようとすればするほど、脳はかえって緊張状態に陥る。眠りとは手に入れるものではなく、心身の緊張を解き放ち、自然に訪れるのを待って自らを委ねるべきプロセスなのである。
あなたが物質に頼って無理やり手に入れたその時間は、本当の睡眠と呼べるものだろうか。私たちが最高のリフレッシュを得るためには、眠りを強引にコントロールしようとする執着を手放し、高ぶった神経を静かに落ち着かせるマインドセットが不可欠である。
自らの力で自然な落ち着きを取り戻すための具体的なアプローチとして、呼吸や身体の感覚に意識を向けることで脳の過剰な興奮を静める科学的メソッドを体系化した世界的名著、ジョン・カバットジンの『マインドフルネスストレス低減法』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。まずは薬やお酒に頼る夜をやめ、呼吸に意識を向けることから始めてみてほしい。コントロールへの執着を手放したとき、それが最高の睡眠の始まりだ。
『睡眠こそ最強の解決策である』シリーズ (全6回)




