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生産性という名の借金を抱えていないか【『不完全主義』4/6】

kotukatu
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今日も生産性の借金から一日を始めていないか

朝目覚めた瞬間から、今日片付けるべき仕事のリストが頭を駆け巡り、憂鬱な気分になったことはないだろうか。現代のビジネスパーソンは、一日をマイナスからのスタート、すなわち生産性の借金を抱えた状態で始めているかのように感じている。夕方までに十分なタスクをこなし、この借金をゼロに戻すことができなければ、自分の一日には価値がなかったと無意識のうちに自分を責めてしまうのだ。

タイパを極めようとする人ほど、この借金返済のプレッシャーに強く縛られている。常に有益なインプットをし、時間を無駄にせず、何かしらの成果を出し続けなければならないという強迫観念だ。しかし、このマインドセットで生きている限り、成功や目標達成すらも喜びにはならない。なぜなら、一つ借金を返しても、翌朝にはまた新たな借金がのしかかってくるからだ。このサイクルに、終わりはないのである。

私たちは生きる権利を生産性で稼ぐ必要はない

オリバー・バークマンは著書『不完全主義』の中で、この絶え間ない活動の背後には、自分が世界に存在する権利を生産性によって稼ぎ出さなければならないという、深く根付いた不安があると指摘している。私たちは、仕事で成果を出したり、社会的に有能であることを証明し続けなければ、自分がここにいる価値がないと錯覚しているのだ。

しかし、冷静に考えてみてほしい。あなたがこの世界に存在することを許可し、その条件として生産性を要求している権威など、宇宙のどこにも存在しない。私たちはすでにこの世界の一部として存在しており、その事実はどれだけタスクをこなそうが、一日中ソファで寝転がっていようが揺らぐことはない。何かを達成したから生きる価値があるのではなく、生きているからこそ様々な活動を楽しめるのだという、根本的な順序の転換が必要なのである。

終わらないToDoリストをDoneリストに変える

この生産性の借金という息苦しい感覚から抜け出すための実用的なアプローチとして、同氏はToDoリストではなく「Doneリスト」をつけることを推奨している。ToDoリストは、まだ終わっていないタスク、つまりあなたの借金の残高を常に突きつけてくるツールである。どれだけ仕事をこなしても、リストの下には常に未完了のタスクが控えているため、達成感を味わう暇がない。

一方、Doneリストは、今日自分が完了させたことだけを書き出していく記録である。朝、ベッドから起きて何もしていない状態を基準とし、メールを一通返した、企画書を一行書いたという事実をプラスの成果として積み上げていくのだ。この視点の転換は、私たちの脳に変化をもたらす。自分はいつも何かが足りない存在ではなく、限られた時間の中で着実に前に進んでいるのだという手応えを取り戻すことができるのである。

生産性の呪縛を解き、今日を生き直せるか

冒頭の問いに戻ろう。あなたが休む間もなくタスクをこなし続けているのは、本当にやりたい仕事だからだろうか。それとも、単に生産性という架空の借金を返すためだけにエネルギーをすり減らしているのだろうか。私たちが真の充実感を得るためには、何かをしなければ価値がないという不完全な自己認識を捨て去り、ただ存在していることそのものを肯定するマインドセットが不可欠である。

國分功一郎による名著『暇と退屈の倫理学』は、常に活動していなければ落ち着かない現代の病理を暴き、何もしないことや退屈を引き受けることの豊かな意味を哲学的に問い直してくれる。消費されるだけの時間に抗い、自らの生を取り戻すための思索の旅へと誘う一冊だ。その言葉が、あなたを縛り付ける生産性の借金を静かに、しかし確実に帳消しにしてくれるはずだ。

『不完全主義』シリーズ (全6回)

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