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お金から自由になるための出口戦略【『JUST KEEP BUYING』6/6】

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増やした資産を取り崩す恐怖に耐えられるか

「ただ買い続ける」というシンプルかつ強力な規律を守り抜いた者は、数十年後、間違いなく大きな資産を手にしているはずだ。しかし、資産形成の旅路において、暴落に耐えること以上に困難な最終テストが待ち受けている。それは、人生の後半戦において「これまで積み上げてきた資産を売却し、消費に回す」というフェーズへの移行である。

私たちは長年、お金を減らすことを「悪」とし、増やすことを「善」とする価値観に染まりきっている。毎月の給与から天引きで投資に回し、右肩上がりのグラフに安心感を覚える日々を数十年も続ければ、その行為自体がアイデンティティとなってしまう。いざ労働から解放され、自由な時間を手に入れたとしても、証券口座の残高が減っていく恐怖に耐えきれず、結局は生活水準を極端に切り詰めてしまう人が後を絶たない。

資産を築くために必要だった「過度な節約」や「投資への執着」という強力な武器は、皮肉なことに、人生の終盤においては自分自身を縛り付ける呪いへと変わる。私たちはどこかのタイミングで、お金を「貯めるモード」から「使うモード」へと、意識のスイッチを強制的に切り替えなければならないのである。

墓場に最も豊かな銀行口座を持っていく悲劇

『JUST KEEP BUYING』の著者データサイエンティストのニック・マジューリは、老後の資産枯渇を恐れるあまり、お金をまったく使えないまま人生を終える人々の多さをデータで指摘している。実際の調査によれば、多くの退職者は引退時よりも多くの資産を抱えたままこの世を去っていくという。つまり、私たちが抱く「老後破産」の恐怖の大半は、数学的な根拠のない幻影にすぎないのだ。

現代の日本社会は、ことあるごとに将来の不安を煽り立てる。老後2000万円問題に始まり、終わりの見えないインフレや年金不安のニュースが連日メディアを賑わせている。その結果、私たちは「今日を楽しむこと」に強い罪悪感を覚え、永遠に訪れないかもしれない「いつかの最悪な未来」のためだけに、現在の貴重な時間とエネルギーを捧げ続けている。

しかし、人生の目的は、死の瞬間に最も豊かな銀行残高を記録することではないはずだ。どれほど巨大な富を築こうとも、病床に伏してからはそのお金で世界を旅することも、新しい挑戦を始めることもできない。データが証明する「使い切れないほどの資産」という現実は、私たちが資産形成の目的を見失い、ただ数字を増やすというゲームに盲目的に従事している異常さを浮き彫りにしているのではないだろうか。

お金を「時間」と「経験」に変換する技術

お金とは本来、何かと交換するためのチケットにすぎない。そして、人生において最も価値のある交換対象は、間違いなく「時間」と「経験」である。同氏は、資産形成の真のゴールを、このチケットを使って自分の人生の主導権を取り戻すことだと位置づけている。

たとえば、どこまでも続く真っ直ぐな道を自転車で駆け抜ける静寂な時間や、足元で眠る猫の温もりを感じながら過ごす穏やかな週末。あるいは、自分が心から愛せる地元の職人が生み出した、美しい機材の手入れに没頭する夜。これらは決して莫大なコストがかかるわけではないが、心に余裕がなければ深く味わうことのできない極上の経験である。私たちが市場の波に耐え、ただ買い続けたのは、こうした「自分にとって本当に大切な時間」を誰にも邪魔されずに確保するためだったはずだ。

お金を稼ぐために犠牲にしてきた健康や人間関係は、後からどれほどお金を積んでも買い戻すことは難しい。だからこそ、ある程度の資産が形成された段階で、私たちは「これ以上、自分の時間を売ってまで数字を増やす必要があるのか」と立ち止まる勇気を持たなければならない。資産の額面ではなく、その資産が自分にどのような自由をもたらしてくれるのかという「実質的な価値」に目を向けるべきである。

資本主義のゲームから美しく降りるための準備

「JUST KEEP BUYING(ただ買い続ける)」。この規律の最終地点は、逆説的だが「買うことをやめ、手放すこと」にある。私たちは皆、資本主義という終わりのないレースに参加させられているが、そのレースのゴールテープは誰も切ってくれない。自分自身で「もう十分だ」と宣言し、美しくコースから降りる準備が必要なのだ。

自分の人生にとって「十分な額」を知るためには、日々の生活コストだけでなく、自分が本当に望むライフスタイルを明確に言語化しておく必要がある。それはExcelの表計算だけで導き出せるものではない。自分の内面と深く向き合い、残された時間で何を感じ、誰とどう過ごしたいのかを問い直す、極めて哲学的な作業である。

この移行期において、自分の価値観の棚卸しをするためのエンディングノートや、人生の優先順位を見つめ直すための特別なツールを手元に置くことは、大いなる助けとなる。自分の人生の終わりを意識することは、決してネガティブな行為ではない。それは、今日という一日を最も鮮烈に生きるための逆算のプロセスなのだ。証券口座の画面を閉じ、自分の人生の設計図を広げたとき、あなたは手元にあるそのチケットを、誰との、どのような時間と交換するのだろうか。

『JUST KEEP BUYING』シリーズ (全6回)

貯金よりも収入を優先すべき理由【『JUST KEEP BUYING』1/6】
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罪悪感なしにお金を使う技術【『JUST KEEP BUYING』2/6】
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個別株というギャンブルを捨てる勇気【『JUST KEEP BUYING』3/6】
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一括投資が分割投資に勝る理由【『JUST KEEP BUYING』4/6】
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