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「大胆さの後悔」、不作為の呪縛を断つ【『The Power of Regret』3/6】

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やらなかった後悔は無限に増殖する

作家ダニエル・ピンク氏は著書『The Power of Regret 振り返るからこそ、前に進める』の中で、人間の後悔は大きく「基盤」「大胆さ」「道徳」「つながり」という4つの普遍的なカテゴリーに分類されると述べている。その二つ目として挙げられているのが、失敗を恐れて挑戦を避けたことによる「大胆さの後悔」である。

さらに、ピンク氏はこの後悔を分析する際、大胆にも行動を起こした結果の「作為(やったこと)」と、大胆さに欠け、行動を起こさなかった結果の「不作為(やらなかったこと)」の二つに明確に分類している。人は短期的に見れば、やってしまった失敗(作為)を強く後悔する。しかし、彼が収集した膨大なデータは、ある残酷な真実を浮き彫りにした。

時間の経過とともにその比率は完全に逆転し、人生の後半においては「あの時、なぜリスクを取って挑戦しなかったのか」という不作為の後悔が圧倒的な割合を占めるようになるのだ。これが、ピンク氏の定義する恐ろしい「大胆さの後悔」の正体である。

起業のチャンスを見送った、好きな人に声をかけられなかった、海外へ行く切符を買わなかった。行動を起こして失敗した場合、その傷は時間が経てば癒え、教訓へと昇華される。しかし行動しなかった場合、そこには「もしああしていれば、全く違う素晴らしい人生があったかもしれない」という無限の可能性の妄想だけが残り、答え合わせができないがゆえに、死ぬまで人間の魂をむしばみ続けるのである。

脳は短期的な恐怖を過大評価する

なぜ私たちは、これほどまでに恐ろしい不作為の後悔を量産してしまうのだろうか。それは人間の脳の構造に原因がある。 私たちの脳は、現状を維持し、目先の安全を確保するようにプログラミングされている。そのため、新しいことに挑戦した時の「恥をかくかもしれない」「失敗して財産を失うかもしれない」という短期的な恐怖を極端に過大評価してしまう。

一方で、挑戦しなかったことによって将来引き起こされる「精神的な空虚さ」や「後悔の痛み」については、遠い未来の出来事として極端に過小評価してしまうのだ。ピンク氏が指摘するように、私たちはこの脳のバグを自覚し、意図的に「大胆な選択」の背中を押す仕組みを持たなければ、安全圏の中でゆっくりと窒息していくことになる。

取り消し可能なデジタル社会の弊害

私たちが大胆な行動を起こせなくなっているもう一つの大きな原因は、現代が「すべて取り消し可能な社会」になってしまったことにある。 メッセージを送ってしまってもすぐに送信取り消しができ、デジタルカメラで撮った写真は納得がいくまで何百枚でも撮り直し、不要なものはスワイプで消去できる。少しでもリスクや摩擦を感じれば、ワンタップで無傷のまま安全圏へと撤退できるのだ。

このあまりにも快適で摩擦のない環境は、私たちから「今、ここで腹を括ってリスクを取る」という野生の決断力を奪い去ってしまった。やり直しがきく世界に慣れきった人間は、絶対に失敗が許されない人生の重大な分岐点に立たされた時、決断を下すことができず、ただ見送ることしかできなくなってしまう。

決断の摩擦を取り戻すインスタントカメラ

やり直しがきくデジタルの甘えを断ち切り、後戻りできない決断を強いる究極のアナログギアがある。それは、シャッターを押した瞬間に物理的な写真が吐き出される『インスタントカメラ(チェキ)』である。

スマートフォンのように何百枚も連写して奇跡の一枚を選ぶことはできない。構図を決め、息を止めてシャッターを押し込んだ瞬間にモーター音が鳴り響き、結構高価なフィルムが消費される。そして数分後には、加工も修正も取り消しもできない不格好で生々しい現実がそこに定着する。 失敗を恐れてシャッターを切らなければ何も残らない。取り消し不可能な結果を物理的に引き受けるこの乱暴な一発勝負の摩擦を日常に取り戻すことで、私たちは人生の決定的な瞬間において、後悔を恐れず大胆な一歩を踏み出す勇気を思い出すのである。

『The Power of Regret』シリーズ (全6回)

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