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集中力は「物理的」に奪われている。睡眠負債と粗悪な食事が招く脳のエネルギー枯渇【『奪われた集中力』2/3】

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テクノロジー以前の「物理的」な大崩壊

「集中できないのはスマホのせいだ」。それは事実だが、全貌ではない。ヨハン・ハリは著書『奪われた集中力』の中で、私たちがシリコンバレーのアルゴリズムを責める前に、直視すべき「残酷な物理的現実」があると指摘する。

それは、現代人の圧倒的な「睡眠不足」と「粗悪な食生活」だ。

私たちは、燃料タンクが空っぽで、エンジンオイルもドロドロの車を運転しながら「なぜこの車は速く走れないんだ!」とハンドルを叩いているような状態にある。脳という物理的なハードウェアが破壊されていれば、どんな優れたライフハック(ソフトウェア)をインストールしても正常に作動するわけがない。

睡眠という「脳のデトックス機能」の停止

ハリが取材した睡眠の専門家たちは、口を揃えて「現代人は常に軽い酔っ払い状態で生きている」と警告する。人間は19時間起きていると、認知能力が法的な飲酒運転の基準値と同等まで低下する。

かつて、睡眠は単なる「シャットダウン状態」だと思われていた。しかし最新の神経科学により、睡眠中のみ脳内に脳脊髄液が流れ込み、日中に蓄積された「有害なタンパク質(代謝老廃物)」を洗い流すという物理的なデトックス(ウォッシュアウト)が行われていることが判明している。

私たちが「睡眠を削って頑張る」時、脳の中ではこの老廃物が洗い流されずにヘドロのように蓄積している。ハリの調査によれば、現代人は1世紀前の人々に比べて睡眠時間が20%も減少しているという。システムエラーが起きて当然の環境なのだ。

集中力を乱高下させる「食」の罠

もう一つ、私たちの集中力を物理的に強奪しているのが「超加工食品」中心の現代的な食生活だ。

精製された炭水化物や糖分(エナジードリンクや菓子パン)を摂取すると、血糖値が急激に跳ね上がり、一時的なエネルギーの爆発(シュガー・ハイ)が起きる。しかし、その後必ずインスリンが大量に分泌され、血糖値の「大暴落(クラッシュ)」が引き起こされる。

ハリはこの状態を「薪ストーブに、太い丸太ではなく、新聞紙ばかりを投げ込んでいる状態」と例える。新聞紙は一瞬で燃え上がるが、すぐに消えてしまい、また次の新聞紙(糖分)を求めてイライラする。この血糖値の乱高下「スパイク&クラッシュ」の波に飲まれている限り、脳が数時間にわたって安定した集中(Deep Work)を保つことは生物学的に不可能である。

「なんとなく」をやめ、数値をエンジニアリングする

「よし、今日からよく寝て、いいものを食べよう」。この精神論だけで生活習慣を変えられるなら、誰も苦労はしない。私たちがやるべきは、意志力への依存をやめ、現状を「数値化」してエンジニアリングすることだ。

そのための最強のツールが、『Oura Ring(オーラリング)』や『Apple Watch』などの睡眠トラッキングデバイスである。

「なんとなく7時間寝た」という主観は当てにならない。これらのデバイスを手に入れ、レム睡眠、深い睡眠、そして心拍変動(回復度合い)を毎日正確に数字でスコア化・見える化するのだ。前夜に食べたジャンクフードや、寝る直前のスマホが、翌日の「回復スコア」をどれほど無惨に破壊するかを数値で突きつけられれば、行動は自然と変わる。

集中力を取り戻す最初のステップは、アプリを消すことではない。自分の「物理的なインフラ」を監視し、脳のハードウェアを正常な状態に修復することなのだ。

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