自分の感情を否定するという自己破壊【『Validation』2/6】
自分の感情をたいしたことはないと否定していないか
重要なプレゼンでミスをしてひどく落ち込んでいるとき、あるいは理不尽なクレームを受けて強い怒りを感じているとき。私たちは無意識のうちに、こんなことで落ち込むなんて自分はメンタルが弱い、もっと大変な思いをしている人はたくさんいるのだから我慢すべきだと、湧き上がってきた感情を自ら押さえ込もうとする。常に前向きで生産的な人間でありたいと願うからこそ、ネガティブな感情を抱くこと自体を社会人としての恥だと感じてしまうのだ。
しかし、自分の感情を否定し、無理やりポジティブな思考に上書きしようとするこの態度は、精神的な健康において最も危険な行為である。感じてはいけない感情など、この世には一つも存在しない。悲しみや怒りといった自然な反応を力技でねじ伏せようとすれば、その感情は消えるどころか、地下水脈のように見えないところで増幅し、やがてコントロール不能な形で爆発してしまうのである。
感情をジャッジせず事実として受け入れよ
キャロライン・フレックは著書『Validation』の中で、他者に対するバリデーション(承認)と同じくらい、自分自身の感情に対するセルフ・バリデーションが重要であると説いている。これは、自分の中に湧き上がった感情に対して、正しいか間違っているかというジャッジを下すのをやめ、ただ自分が今そう感じているという事実を、客観的かつ温かく認めるプロセスである。
同氏によれば、私たちは出来事そのものによって傷つくのではなく、その出来事に対して抱いた感情を自ら否定することによって二重に傷ついている。プレゼンに失敗して落ち込むのは自然な一次的感情だが、そんなことで落ち込む自分はダメな人間だと責めることで、自己嫌悪という二次的な苦しみを生み出しているのだ。セルフ・バリデーションとは、この不必要な二次的な苦しみを断ち切るための、シンプルで強力な実践なのである。
自己否定という二次的な苦しみから抜け出す
自分の感情を承認するためには、ただ心の中で「自分は今、悲しんでいる」「これだけ準備したのだから、悔しいと思うのは当然だ」と、自分の心に静かに語りかけるだけでいい。感情を無理にコントロールしようとしたり、解決策を急いだりする必要はまったくない。ただ嵐が通り過ぎるのを待つように、自分の感情の安全な居場所を作ってあげるのだ。
感情は、認められ、その存在を許されることで初めて、自然に薄れていく性質を持っている。自分に対して厳しい裁判官であり続けることをやめ、どんなみっともない感情であっても、それを抱くもっともな理由があったのだと、自分自身の最大の理解者になってやること。この自己承認の習慣こそが、過酷なビジネス環境の中でしなやかな心(レジリエンス)を保つための、静かで確かな防波堤となるのである。
誰よりも強力な自分自身の味方になれるか
あなたが自分に鞭を打ち、感情を押し殺してまで前を向こうとするその努力は、かえって自分自身の精神を蝕む自己破壊になっていないだろうか。私たちが本当の意味でタフに生き抜くためには、ネガティブな感情を悪とする思い込みを捨て、ありのままの弱さや苦しみを静かに肯定するマインドセットが不可欠である。
自分自身への過度な期待や批判を手放し、真の心の強さを手に入れるための確かな一歩として、苦しんでいる親友に接するような温かい思いやりを自分自身に向ける科学的メソッドを体系化した名著、クリスティン・ネフの『セルフ・コンパッション』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。厳しい自己批判の鞭を置き、自分の感情をただ認めること。その一冊が、あなたを追い詰める見えないプレッシャーを静かに、しかし確実に解きほぐしていくはずだ。
『Validation』シリーズ (全6回)




