資産に比例して支出をアップデートできるか【『THE WEALTH LADDER』2/6】
資産が増えても貧しいマインドのままでいる悲劇
自己投資によって稼ぐ力が高まり、手元の資金が1500万円を超えてくると、いよいよ余剰資金を市場に投じてお金に働かせる「レベル3(投資)」のフェーズに突入する。
しかし、資産の階段を順調に登っているにもかかわらず、私たちのお金に対する価値観は適切にアップデートされているだろうか。手取りが増え、投資の運用益も出始めているのに、いまだにレベル1(生存)時代の防衛本能を引きずり、スーパーをハシゴして数十円の節約に数時間を費やしてはいないか。初期の資産形成において節約は強力な武器であったが、レベル3に入ってもそのマインドを引きずり続けることは、人生の貴重な「時間」という資源をドブに捨てる行為に他ならない。
貧しい時代の習慣は恐ろしいほど根深く、私たちの心に「お金を使うことへの罪悪感」を植え付ける。本来、資産とは人生の選択肢を広げ、自由な時間を増やすためのツールであるはずだ。しかし、通帳の数字が増えること自体が目的化し、自分自身の時間を買い戻すための適切な支出すら渋るようになれば、それはお金の奴隷になっている状態と言わざるを得ない。
0.01パーセントルールという強力な免罪符
『THE WEALTH LADDER』著者であるデータサイエンティストのニック・マジューリは、この「お金を使えない病」を克服し、現在のレベルに応じた適切な消費行動を促すための基準として「0.01パーセントルール」を提唱している。これは、純資産の0.01パーセント以下の支出であれば、一切の罪悪感を抱くことなく、価格を比較する手間すらも省いて即座に買ってよいという非常に合理的なガイドラインである。
たとえば、純資産が1500万円あるレベル3の入り口に立つ人にとって、その0.01パーセントは1500円である。純資産が5000万円になれば5000円だ。同氏のデータ分析によれば、この範囲内の支出がどれだけ積み重なっても、長期的な資産形成の軌道に致命的なダメージを与えることは決してない。このルールは、少額の買い物のたびに発生する「買うべきか否か」という決断疲れを完全に排除し、私たちの脳のリソースをより重要な仕事や経験へと振り向けるための強力な免罪符となるのである。
時間の購入こそが最高ランクの消費行動
現代のタイパ(タイムパフォーマンス)至上主義において、このルールが最も威力を発揮するのは「時間を買う」ための消費である。通勤の疲労を軽減するための特急券や、自炊の手間を省くための高品質な惣菜、あるいは日々の家事を代行してくれるサービスへの支出は、単なる贅沢ではない。それは自らの人的資本を維持し向上させるための、必須のメンテナンス費用である。
資産の階段をさらに上へと登り続けるためには、自分自身のエネルギーを常に高い水準に保つ必要がある。数百円、数千円を惜しんで疲労を溜め込み、休日に寝込んでしまったり、本業でのパフォーマンスを落としてしまったりする方が、トータルで見ればはるかに大きな経済的損失を生む。私たちは、お金を使って「自分から嫌な労働を買い取る」という感覚を、もっと積極的に身につけるべきではないだろうか。
罪悪感を捨てて自分から労働を買い取る
これまで節約を美徳として生きてきた人にとって、最初は自分のお金で自分の時間を買うことに抵抗があるかもしれない。しかし、人生の有限な時間をどう使うかという大きな問いに対して、私たちはもっと貪欲になるべきだ。日々の単調な作業を機械や他者に任せることで生まれた余白の時間は、新たなスキルを学ぶための時間となり、あるいは心身を深く休めるための至福のひとときとなる。
手始めに、あなたが毎日最も面倒だと感じている家事をひとつ、テクノロジーの力で自動化してみてはどうだろうか。床の掃除に毎日15分かけているなら、迷わずロボット掃除機を導入すべきだ。その初期投資は、今後数年間にわたって毎日15分の自由な時間をあなたに配当し続けてくれる。浮いた時間でゆっくりと本を開き、知識を吸収する。それこそが、ただの数字の羅列だった資産を、豊かな人生という確かな手触りへと変換する最初の一歩になるはずだ。
『THE WEALTH LADDER』シリーズ (全6回)




