CULTURE
PR

小麦に「家畜化」された人類。農業革命という史上最大の詐欺【『サピエンス全史』2/6】

kotukatu
本ページはプロモーションが含まれています

農業革命という「史上最大の詐欺」

歴史の教科書では、我々はこう教わってきた。「人類は知能の発達によって自然をコントロールし、農業を始めることで、飢えから解放された豊かな暮らしを手に入れた」と。 しかし、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、世界的ベストセラー『サピエンス全史』の中でこの無邪気な通説を真っ向から否定し、農業革命を「史上最大の詐欺」と冷酷に切り捨てる。

少し視点を変えて考えてみてほしい。1万年前、小麦は中東の狭い地域に自生する、ただの取るに足らない雑草の一つに過ぎなかった。それが今や、地球上の耕地面積の大部分を占め、世界中のあらゆる大陸で爆発的に繁殖している。進化と生存競争という観点において、小麦は植物として「歴史的な大勝利」を収めたのだ。

では、その小麦が育つための過酷な世話を、一体「誰」がしているのか? 我々サピエンスである。 小麦は岩を嫌うから、人間は炎天下で腰を痛めながら岩をどける。小麦は水を欲しがるから、人間は川から重い桶を運んでくる。害虫がつけば駆除し、病気になれば特効薬を撒く。 「人間が小麦を飼い慣らした」のではない。「小麦が人間をあごでこき使い、世界中に自分たちのDNAのコピーを増やさせた」のだ。我々の背骨や関節は、毎日畑を耕すようには進化していなかった。これを「小麦による人間の家畜化」と呼ばずして何と呼ぶのだろうか。

贅沢という名の「不可逆な罠」

農業という詐欺的な取引によって、人間は一体何を得たというのか。安定した食料と平穏な日々か? 答えは否だ。

狩猟採集民の食事は数十種類の動植物からなり、栄養バランスが完璧だったが、農耕民は来る日も来る日も小麦(パンや粥)ばかりを食べるようになった。その結果、人類は深刻な虫歯や栄養失調に悩まされ、平均身長すら縮んでしまった。さらに、常に同じ土地に縛り付けられ、未来への備え(貯蓄)が必須となったため、「来年は干ばつで飢え死にするかもしれない」という強烈な精神的ストレスを永遠に抱え込むことになったのである。

なぜ、人類はそんな割に合わない取引をしてしまったのか。それは「贅沢の罠」にハマったからだ。 最初は「少し工夫して種を蒔けば、食料に余裕ができて楽になる」はずだった。しかし、食料に余裕ができて人口が爆発的に増えると、増えた子供を養うために、以前よりもさらに過酷な長時間労働を強いられるようになった。一度増えた人口を減らすことはできず、もう後戻りはできない。生活を「少し便利にする」はずの小さな変化が、結果として種全体を重労働の奴隷へと縛り付けてしまったのだ。

「種の繁栄」は「個人の幸福」を約束しない

農業革命によって、サピエンスという「種(DNA)」の総人口は爆発的に増加した。生物学的な進化の基準で見れば、これは間違いなく大成功である。しかし、個人の幸福度という尺度で見れば、大失敗だった。一人の農夫は、一人の狩猟採集民よりも、はるかに過酷で、退屈で、病気に満ちた一生を送ることになったからだ。

ここには、我々が直視すべき残酷な真実がある。「進化は、個人の幸福など1ミリも気にしていない」ということだ。 巨大企業の売上や利益が過去最高を記録しても、末端で働く社員の幸福度が上がるとは限らないのと同じである。我々が信じて疑わない「文明の進歩」とは、実は「システム(種や国家)の繁栄」のために「個人の安らぎ」を犠牲にする冷酷なエンジンのことなのかもしれない。

どうせ奴隷なら、最高級の「ご主人様」を味わえ

この農業革命の罠は、1万年経った今も不可逆である。我々はもう、森を駆け回って木の実や野ウサギを狩る、あの自由な狩猟採集民には戻れない。

どうせ我々が「小麦に家畜化された奴隷」としてこの一生を終えなければならないのなら、せめて中途半端な安物ではなく、世界最高峰の「ご主人様(小麦)」にひれ伏し、その圧倒的な力を美味しく味わい尽くすべきではないだろうか。

週末の夜、スーパーの特売品の代わりに、戦略的な大人が手に入れるべきプレミアムな小麦製品がある。自社栽培の小麦を愛するあまり、麦畑のど真ん中に工場を建ててしまったという狂気のイタリア農業法人、『Mancini(マンチーニ)』の極上パスタだ。

彼らこそ、まさに「小麦に家畜化された究極のサピエンス」である。近代的な高温乾燥を拒否し、厳選された自前の小麦を職人が数十時間かけて低温乾燥させたこのパスタは、噛み締めた瞬間に、我々の祖先がなぜこの植物に魅了され、自ら奴隷になる道を選んでしまったのかを本能レベルで理解させてくれる。

お気に入りの赤ワインを開け、完璧にアルデンテに茹で上がった黄金色の「支配者」を皿に盛り付けよう。 進化の残酷な真実に思いを馳せ、1万年続く壮大な歴史の皮肉を、最高の美味として胃袋に収めるのだ。それこそが、幻覚から目を覚ましたサピエンスにのみ許された、最高の知的エンターテインメントなのである。

『サピエンス全史』シリーズ (全6回)

「お金」という集団幻覚。サピエンスを支配する最強の嘘【『サピエンス全史』1/6】
「お金」という集団幻覚。サピエンスを支配する最強の嘘【『サピエンス全史』1/6】
世界を一つにしたのは「愛」ではない。お金と帝国という至高の暴力【『サピエンス全史』3/6】
世界を一つにしたのは「愛」ではない。お金と帝国という至高の暴力【『サピエンス全史』3/6】
ヨーロッパの覇権を決定づけた「無知の発見」。科学と帝国の共犯関係【『サピエンス全史』4/6】
ヨーロッパの覇権を決定づけた「無知の発見」。科学と帝国の共犯関係【『サピエンス全史』4/6】
資本主義という最強の宗教。止まれば死ぬ「自転車操業」と距離を置く方法【『サピエンス全史』5/6】
資本主義という最強の宗教。止まれば死ぬ「自転車操業」と距離を置く方法【『サピエンス全史』5/6】
サピエンスの終焉。全知全能の神か、退屈な動物か【『サピエンス全史』6/6】
サピエンスの終焉。全知全能の神か、退屈な動物か【『サピエンス全史』6/6】
Recommend
こちらの記事もどうぞ
記事URLをコピーしました