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お金だけが富ではない——5つの富という新しい人生の地図【『The 5 Types of Wealth』1/6】

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なぜ私たちは「成功したはずなのに満たされない」と感じるのか

あなたは自身のキャリアや人生において、社会が「成功」と見なす目標を達成したにもかかわらず、心に空虚さを感じたことはないだろうか。『The 5 Types of Wealth』著者で作家・起業家・投資家のサヒル・ブルームもまた、かつて同じように「成功のゲームを間違ってプレイしていた」ことに気づいたという。

彼はスタンフォード大学で野球奨学金を得る優秀な学生だったが、肩の怪我でプロ野球選手の夢を断念した。その後の進路を迷う中、著名な投資家から「すぐに年10万ドル、30歳までには有り余るほどの金を稼ぐだろう」と助言され、お金が幸福に直結すると信じて投資銀行の道へ進んだ。30歳になる頃、ブルームは高給の仕事、役職、家、車といった、社会が定義する「成功の証」をすべて手に入れた。しかし、そこで彼を襲ったのは、「これが欲しかったものなのか?」という虚無感だった。彼はこの状態を「到達の誤謬(arrival fallacy)」と呼び、目標達成が一時的な満足しかもたらさないことに気づいたのである。

このようなお金だけを追い求める「間違ったゲーム」から抜け出し、真に豊かな人生を築くための新しい地図として、ブルームは「5つの富」というフレームワークを提唱する。

「ピュロスの勝利」を避ける——5つの富という新しい羅針盤

お金だけを追い求める人生は、紀元前3世紀のエピロス王ピュロスが経験した「ピュロスの勝利」に例えられる。ピュロス王はローマ共和国との戦いで勝利を収めたが、その代償はあまりにも大きく、「もう一度こんな勝利をすれば、我々は破滅する」と叫んだと言われている。

このエピソードが示すように、仕事の目標達成と引き換えに、人間関係、健康、時間の自由といった大切なものを失うことは、人生における「ピュロスの勝利」だ。社会が設定した「お金」という画一的な成功指標だけでは、私たちは真の豊かさを測ることができない。同氏は、この「壊れたスコアボード」を修正するために、以下の5つの富を新しい測定基準として提案する。

時間の富:時間の使い方を自由に選択し、大切な人との瞬間を慈しむ自由を指す。これは、時間に有限な資産としての価値を見出すことで得られる。

社会の富:個人的および仕事上の人間関係の深さと広さを意味する。真の友人や家族との絆、そしてコミュニティとの繋がりが人生の質感と意味を豊かにする。

精神の富:人生の目的意識、知的好奇心、成長への意欲、そして内省のための静かな時間を持つことを指す。これらは心の健康と充実感の源となる。

身体の富:健康、フィットネス、活力を意味する。身体を大切にすることは、他の富を享受するための土台となる。

経済の富:金融資産と負債の差額である純資産だけではなく、「自分にとって十分な額」という明確な定義を持つことを含む。お金は目的ではなく、他の富を築くための手段である。

これらの5つの富はそれぞれが重要であり、その相互作用とバランスが、真に満たされた人生を築く上で不可欠だ。新しいスコアボードは、人生の「測定」「意思決定」「デザイン」の3つの側面で、私たちに包括的な豊かさをもたらす。

人生の「季節」を乗りこなす「富スコア」

社会が設定した「デフォルトの人生」は、私たちに画一的な成功の型を押し付ける。しかし同氏は、真の豊かさは、自分自身の「夢の人生」を定義し、その定義に基づいて生きることから始まると語る。人生は一本の直線ではなく、それぞれ異なる優先順位や課題を持つ「季節」の連続だ。20代の基盤構築の季節と、40代の家族を築く季節とでは、富のバランスの理想形は当然異なる。

「5つの富」のフレームワークは、各富のバランスを「オフかオンか」ではなく「調光スイッチ」のように調整できると説明する。ある季節に特定の富を優先しつつも、他の富を完全に「オフ」にするのではなく、最小限の努力で維持するための「ハイレバレッジなシステム」を活用するのである。

この考え方を具体的に可視化するのが「富スコア」である。同著では、各富に対して5つの質問に0〜4点で回答することで、それぞれの富の現状を数値化し、合計100点満点での自己診断を促している。同氏自身もこの「富スコア」の概念を通じて人生の転換を果たした。カリフォルニアから東海岸への引っ越し、キャリアの転換、健康への注力、そして息子の誕生といった一連の変化は、お金だけではない包括的な豊かさを追求した結果だった。同氏の経験が示すように、富スコアは、自身の強みと弱みを明確にし、目標設定と進捗管理に役立つ。

あなたにとって「十分な富」とは何か——夢の人生を定義する

古代ローマの哲学者セネカは「どこへ行くべきかを知らない船乗りにとって、追い風はない」と述べた。これは、人生において明確な方向性を持つことの重要性を示している。サヒル氏は、人生はスピードではなく「方向性」が重要だと強調する。そして、その方向性を定めるために、私たち自身が「夢の人生」を定義することが出発点となるのだ。

「未来の自分への手紙」を書くという自己省察のワークも提唱している。10年後、5年後、あるいは3年後の自分がどうありたいか、具体的なイメージを鮮明に描くことで、現在の行動を導く「真の北」を確立するのである。同氏自身も、この手紙を通して「答えはすでに自分の中にある。正しい問いが見つかっていないだけだ」と気づいたという。

『The 5 Types of Wealth』は、お金だけでは測れない真の豊かさを見つけるための新しい人生の地図だ。このフレームワークは、私たちの人生の「測定」「意思決定」「デザイン」の3つの側面において、より良い選択を促し、自分にとっての「十分な富」とは何かを明確にする手助けとなる。

そうした思考をさらに広げるための一冊として、『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(モーガン・ハウセル著)を手に取ってみてはどうだろうか。お金に関する人々の非合理的な行動や思考の偏りを洞察し、真の豊かさとは何かを深く考えさせてくれるはずだ。

Kの視点

本書の「5つの富」フレームワークを目新しい地図のように紹介するのは、自己啓発書の系譜を踏まえるとやや誇張に映る。スティーブン・コヴィー『7つの習慣』のWhole-Person Paradigm(身体・知性・感情・精神の4分割)、トニー・ロビンスの6 Human Needs、ティム・フェリス『4-Hour』系の3D(Dreamline・Deal)など、人生領域の多次元化はこのジャンルで何度も繰り返されてきた発明である。原書がこれらの先行系譜と自己の差別化をほとんど語らない点は、批判的に読む価値がある。

本書の象徴的フレーズ「親に会えるのはあと15回」も、ブルーム氏の独自発見というより、ティム・アーバンが2015年に「The Tail End」というブログ記事で精密に数学化した有名な思考実験のリブランディングに近い。同様に「到達の誤謬(Arrival Fallacy)」は、ハーバードのポジティブ心理学者タル・ベン・シャハーが2007年に提唱した既存概念で、本書はその応用例だ。原書を読む際は、各概念の出典の薄さを意識し、「初めて聞いた人にとっての強い物語」とは別に評価したほうが安全だろう。

日本市場での適用性も別途検討が要る。「Goldman SachsかMcKinseyの最高オファーで成功を測る20代」を前提とした語り口は、本書の主要対象層を米国エリート学生に限定する。日本のホワイトカラー読者の多くは、そもそも「到達の誤謬」を語れるほどの到達経験を持たない段階で人生設計を迫られており、本書の枠組みをそのまま輸入するより、「Financial Wealthがまだ十分に積み上がっていない読者は、どの富から手をつけるべきか」を別途考える必要がある。シリーズを通して、この日本的留保を念頭に置いて読み進めたい。 — K

『The 5 Types of Wealth』シリーズ(全6回)

父と過ごせる回数を数えたことがあるか【『The 5 Types of Wealth』2/6】
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あなたの葬儀の最前列には誰が座るのか【『The 5 Types of Wealth』3/6】
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お金だけが富ではない——5つの富という新しい人生の地図【『The 5 Types of Wealth』1/6】
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