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「引退」は死語になる。80歳現役時代の残酷な生存戦略【『LIFE SHIFT』1/6】

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親の背中を見て育つと、あなたは路頭に迷う

私たちは無意識のうちに、親や祖父母の人生を「正解」のモデルとして刷り込まれている。学校を出て、一つの会社に勤め上げ、60代で定年退職し、年金で優雅な余生を送る。しかし、『LIFE SHIFT』著者、ロンドン・ビジネス・スクール教授リンダ・グラットンが提示するデータは、そのロールモデルが完全に賞味期限切れであることを残酷なまでに突きつける。

著者らは、1945年生まれの「ジャック」と、1998年生まれの「ジェーン」という架空の人物を使ってこの断絶を説明する。ジャックの時代、寿命は短く、年金制度は堅牢で、「教育→仕事→引退」という3ステージの人生は合理的だった。しかし、100歳以上生きる確率が50%を超えるジェーンの世代において、この3ステージモデルを適用すればどうなるか。計算上、彼女は勤労期間中に収入の50%以上を貯蓄に回さなければ、老後に破産することになる。それが不可能である以上、ジェーンに残された道は、80歳代まで労働期間を延長することだけだ。かつての親の生き方を真似ることは、現代において「確実な破滅」への道なのだ。

年齢のタグを外す。「マルチステージ」の正体

では、死ぬまで働き続けるだけの地獄が待っているのか? そうではない。ここで登場するのが「マルチステージ」という新しい概念だ。これは単に労働期間が延びるだけの話ではない。「教育」「仕事」「引退」という3つの固定された箱が解体され、人生の中で順序なく何度も現れるサイクルのことだ。

かつて「大学生」といえば20歳前後だったが、マルチステージでは40歳や60歳の大学生が当たり前になる。「新人」は若者だけの特権ではなく、50歳で新しい業界に飛び込めば、その人は「新人」だ。年齢とステージの紐付けが完全に切断され、20代で起業し、40代で学び直し、60代で会社員に戻るといった具合に、人生のモードを何度も切り替える。この流動的な生き方こそが、100年という長尺を飽きずに、かつ経済的に生き抜く唯一の構造なのだ。

「レクリエーション」から「リ・クリエーション」へ

人生がマルチステージ化すると、「余暇」の意味も劇的に変わる。かつての余暇は、労働で疲れた体を休めるための「レクリエーション(娯楽)」だった。しかし、80歳まで現役で働き、何度もモードを切り替えるマルチステージの人生においては、単なる休息だけでは体や心が持たない。

必要になるのは、自分を再創造するための「リ・クリエーション(再創造)」だ。仕事を中断して長期の旅に出たり、集中的にスキルを習得したりする時間。これまでの常識では「キャリアの空白(ブランク)」とネガティブに見なされていた期間こそが、100年時代では次のステージへジャンプするための「燃料補給」として必須のプロセスとなる。履歴書の空白を恐れるな。真に恐れるべきは、空白を作らずに走り続け、40代でガス欠になることだ。

終わらない旅のための「荷造り」を始めよう

80歳まで現役を続けると聞いて、絶望する必要はない。それは、学び直しや新しい挑戦を楽しむ時間が、たっぷり残されているということでもある。ただし、この長い旅路を歩き通すには、軽量で高性能な装備が必要だ。古い知識や重たい常識は捨て、常に新しい情報をインストールし続けるための環境を整えなければならない。

私の場合も、そのための「生存装備」としてスマホの他、『Kindle Paperwhite』を常にカバンに入れている。先日も電車の中でふと時間が空いたとき、スマホでSNSのタイムラインを眺める代わりに、この端末を開いて新しい歴史書を数ページ読んだ。通知が一切鳴らず、ただ文字とだけ向き合えるこの端末は、終わりのないマラソンを走るための必須の水筒のようなものだ。厳選した数冊を、重量を気にすることなく、どこにでも持ち出せる。何にせよ、100年という時間を味方につけるか、敵に回すか。それは、今日のスキマ時間に何を取り出すかで決まるのかもしれない。

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