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第1話『10倍成長 2倍より10倍が簡単だ』

コツ活 第1話『10倍成長 2倍より10倍が簡単だ』ダン・サリヴァン|古書店のカウンター
コツ活 編集部
本ページはプロモーションが含まれています

今夜の1冊

  • 著者:ダン・サリヴァン、ベンジャミン・ハーディ/:深町あおい
  • どんな本か:成果を2倍にするより10倍にするほうが簡単だ、という逆説ひとつで通した本だ。小さい目標はやり方が無限にあって絞れないが、10倍にすると成り立つ道がごく少ししか残らない、という理屈である。著者は経営者向けのコーチと、組織心理学者。

朗読で聴く

この記事の物語部分はフィクションです。登場人物・書店・会話はすべて架空で、実在の人物・団体とは関係ありません。

取り上げる書籍は実在しますが、作中の要約・解釈・批評は編集部による独自のもので、著者・出版社の見解を代弁するものではありません(正確な内容は原書でお確かめください)。

第1話『10倍成長 2倍より10倍が簡単だ』

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目次
本文
オープニング
コツ活 第一話 10倍成長 2倍より10倍が簡単だ
第一章 特にありません
金曜の午後、異動希望調査の紙が配られた。年に一度、来年どこの部署へ行きたいかを書いて出す紙だ。
コツ太は入社してから六回、この紙を出している。六回とも、希望欄には同じ文字を書いた。
コツ太特にありません。
書けば三秒で終わる。今年もそうするつもりでペンを持ったとき、コピー機の前から呼ばれた。
課長コツ太くん。その紙、今年はちゃんと書いてよ
コツ太あ、はい
課長六回とも『特にありません』で出してきてるだろ。上から聞かれるんだよ。コツ太くんは何がやりたいのって
課長はコピーを抱えたまま、こちらを見た。
課長何がやりたいの
言葉が出てこなかった。頭の中を探しても、そこにあるのは今週片づけた仕事の名前ばかりで、行きたい場所の名前は一つもなかった。
課長まあ、来週までだから
デスクに戻ると、今月の月次レポートが印刷したまま置いてあった。毎月出している売上の報告書だ。今月ぶんは、22ページある。入社した年は、同じ一か月ぶんが4ページだった。
厚くしたのは自分である。表を足し、グラフを足し、注釈を足した。足すたびに仕事をした気がした。22ページを綴じて課長の机に置く瞬間が、月にいちどの、いちばんまともな時間だった。
読んだ、と言われたことは一度もない。
課長見やすくなったね
去年そう言われて、コツ太はそれを褒め言葉として三日ほど抱えていた。
第二章 同じ夜に買った本
その夜、コツ太は本棚の前に立っていた。
異動希望の紙は、何も書かないまま鞄に入っている。家に着いて机に置いたら、目の前の棚が視界に入った。
ビジネス書ばかりだった。時間術、仕事術、思考法、習慣。この六年で買ったものだ。
どれも同じ夜に買っている。金曜の帰り、何かやらないと自分が終わる気がした夜だ。買った週は続く。翌週から読まなくなる。半分から先まで行った本は、たぶん三冊もない。
背表紙を眺めていると、六年ぶんの金曜が並んでいるように見えた。
コツ太は紙袋に10冊詰めた。捨てるのは気が引けたが、置いておく理由も思いつかなかった。
翌日の土曜は、午前中に野暮用を片づけた。紙袋を提げて駅前へ向かったのは、日が傾きはじめてからだった。
大きい買取店は二時間待ちと出ていた。番号札を取ったが、順番が来るころには日が暮れている。10冊のために土曜が終わるのかと思ったら、急に馬鹿らしくなって、コツ太は札を捨てた。
駅とは反対の細い路地に折れたのは、なんとなくだった。奥にひとつ、灯りがあった。ガラス越しに明かりが歩道までこぼれている。
看板には「夜ひらく本屋」とあり、その下に小さく「古本買い取ります」と書いてあった。脇の黒板には、今日のコーヒー、浅煎りブレンド、と白い字で書いてあった。
コツ太は紙袋を持ち直した。二時間待つよりは早い。
引き戸を開けて、足を止めた。入ってすぐの平台に新刊が積んである。その奥に喫茶の席が三つ四つ。さらに奥は天井までの棚で、日に焼けた背がぎっしり詰まっていた。
古い紙の匂いに、焦げた豆の匂いが混じっていた。奥の棚の脇に、小さな焙煎機が置いてある。
すずいらっしゃいませ
豆を挽く手を止めて、若い店員が顔を上げた。名札に、すず、とある。
コツ太あの、看板に古本買い取りますって
すずやってます。呼んできますね
すずは奥に声をかけた。作業台のほうから、
店長はい
と返事があった。すずは紙袋に目をやって、それからコツ太を見た。
すず査定、少しかかりますよ。コーヒー飲まれます?
コツ太じゃあ、お願いします
第三章 2,130円
年配の男が前掛けで手を拭きながら出てきた。すずが店長と呼んだ。
コツ太10冊です。あの、たいしたものはないんですけど
店長見てみないと分からんよ
店長は紙袋をカウンターに置いて、一冊ずつ出しはじめた。表紙を開き、後ろを見て、また閉じる。脇へ積む。次。
一冊にかける時間が、数えられるほど短い。コツ太は数えた。三秒。次も三秒。自分が半年迷って買った一冊も、三秒だった。
コツ太あ、それ、まだ新しいです。去年出た本で
店長うん
店長は手を止めない。2冊目、3冊目と同じ速さで脇へ流れていった。
口をつぐんだ。持ってきた側が説明を足しはじめたら負けだ、という気がした。
ところが6冊目で、手が止まった。
店長はその1冊だけをカウンターの中央に置き、明かりを寄せて、奥付を読んだ。それから虫めがねを出して、扉の隅をのぞきこんだ。
コツ太それ、何かありますか
店長あるかもしれん
顔は上げないまま、店長は続けた。
店長これ、どこで手に入れたのかね
コツ太は表紙を見た。ビジネス書ではなかった。古い装丁の、旅の記録らしい。思い出そうとしたが、出てこない。
コツ太覚えてないんです。もらったのかもしれません
店長そうだろうね
店長は虫めがねを当てたまま言った。
店長君が自分で選んで買う本じゃない
店長は虫めがねを置いて、その1冊を別の場所に移した。それから残りをまた三秒ずつで片づけた。
店長全部で2,130円だね
コツ太2,130円
店長うん
コツ太は言葉を探した。10冊で2万円以上は出しているはずだった。
コツ太あの、なんでそんなに速いんですか。ちゃんと見ないんですか
言ってから、失礼だったかと思った。店長は気にしていないようだった。
店長見てるよ。三秒でね
コツ太三秒で分かるんですか
店長分かるものだけ三秒で決めてる。10冊のうち8冊は相場で決まるんだ。うちで何をしようと値は動かん。丁寧に見たところで、一円も増えないからね
コツ太じゃあ、さっきの1冊は
店長さっきの1冊は動く。初版かどうかで、値が十倍になることがある
店長は移した1冊を持ち上げた。
店長その1冊は2,000円で取る。残りの9冊ぜんぶで130円だ
コツ太2,000円?
思わず声が出た。
店長この訳者のこれは、もう出ないんだ。探している人が何人かいる
店長は表紙を指でなぞった。
店長うちの相場でね。よそならもっと出すかもしれん
9冊で130円。1冊あたり14円。ガム一枚より安い。
コツ太そんなに違うんですか
店長違うよ
店長は伝票を書きながら答えた。感慨も、慰めもなかった。コツ太の六年ぶんの金曜は、そういう値段だった。
第四章 誰が買いに来るか
コツ太どうやって見分けるんですか。表紙で分かるんですか
店長客を見る
答えになっていない気がして、コツ太は黙った。店長は伝票を書きながら続けた。
店長本を見ても分からんよ。うちに探しに来る客がいるかどうかだ。いない本は、うちで手をかけても意味がない
コツ太うちの客、というのは
店長この路地、駅から住宅のほうへ抜ける近道でね。通るのはたいてい仕事帰りの人だよ
店長は伝票の裏に、正の字を書きかけて消した。
店長長年やってると分かる。買っていくのは二種類だ。仕事の本と、旅の本。明日のことを考えてる人と、どこか遠くへ行きたい人だな
コツ太僕が持ってきたのも、仕事の本ですけど
店長そうだ。だから買った
だったら、なぜ130円なのか。聞こうとしたとき、店長が入口のほうを顎で指した。
店長ただ、君が持ってきたのは去年出た本だろう。同じものが、そこに新品で積んである
コツ太は振り返った。平台に、見覚えのある背表紙が並んでいた。自分が売りに来た本と、同じ本だった。
コツ太新刊も置いてるんですか
店長うちは一軒で三つやってる。手前が新刊、この壁が古本、窓際がコーヒーだ。夜しか開けないからね。三つ束ねて、やっと一軒ぶんになる
店長は伝票の数字を丸で囲んだ。
店長つまりだ。同じ本が、同じ店の中で、新品と古本で並ぶ。君なら、どっちを取るね
コツ太そりゃ、新品を取ります
店長そうだろう。だから、うちが古本のほうを高く買う理由がない
コツ太
店長新刊で買えるものは、古本にしたところで値がつかん。それだけの話でね
コツ太でも、安く買いたい人はいますよね。同じ本なら中古のほうが
店長いるよ。うちの客の半分はそっちだ
コツ太は9冊の山を見た。それなら、この山にも買い手はいるはずだった。
店長その人たちはね、その本を探して来るんじゃない。安い棚を眺めて、目についたのを持っていくんだ。去年出たビジネス書は、どこの古本屋にも山ほどある
店長は入口のほうを顎で指した。
店長うちが100円で並べれば、隣の店は80円で並べる。最後まで残るのはこっちだ
コツ太残ったら、どうなるんですか
店長一年経って売れない本は、こっちが金を払って引き取ってもらう
はじめて聞く話だった。売れない本は、ただ売れないのではなく、置いておくだけで減っていくらしい。
店長だから買うときに、その分を引いておく。引いた残りが130円だ
コツ太じゃあ、どういうのなら値がつくんですか
店長新刊で買えないものだ。絶版になったもの。訳が古くて手に入らんもの。誰かの蔵書だったもの
店長は2,000円の1冊を指で示した。
店長探して、どこにも無くて、最後にうちへ来る。そういう客のための1冊だ
コツ太は9冊の山を見た。どれも、探さなくても手に入る。
店長まあ、悪い本じゃないよ
すずがコーヒーを持ってきた。ひと口飲むと、思っていたより酸味が軽くて、後から甘さが残った。
コツ太おいしいです
すずよかった。今日のは浅煎りの豆なんです
コツ太煎るって、ここでですか
すずはい。店長が朝に少しだけ。まとめて煎ると古くなるので
すずは黒板を指した。
すずその日のぶんしか無いんですよ。だから毎日変わります
コツ太はカップを持ったまま、カウンターの9冊を見た。
130円の山。積んでみると、思ったより低い。
第五章 1冊だけ残る
店長持って帰る手もあるよ
店長が言った。
コツ太
店長売らなくていい。9冊、返そうか
コツ太いえ、いいです。置いておいても読まないので
店長そうか
店長は9冊を脇に寄せて、2,130円を数えはじめた。
コツ太あの
店長うん
コツ太10冊持ってきて、9冊が130円なのって、僕が本の選び方を間違ってるってことですか
店長は金を数える手を止めた。
店長そうは言っとらん
コツ太でも
店長選び方は間違っていないよ。買ったときは、たぶんどれも必要だったんだ
1,000円札を2枚と、100円玉を1枚、10円玉を3枚、カウンターに並べた。
店長困るのは、9冊とも同じ顔をしていることでね
コツ太同じ顔
店長時間術、仕事術、思考法。全部『いまの場所で、もっとうまくやる』本だ。六年買い続けて、この並びなら、行き先が一度も変わっていないように見えるね
コツ太は自分の棚を思い浮かべた。言われてみれば、どれも金曜の夜に買っている。何かやらないと自分が終わる気がして、帰りに書店へ寄った夜だ。そういう夜に選ぶ本が、行き先を変えるはずもなかった。
店長ああ、それと
店長は札を数え終えて、こちらを見た。
店長商売の人間が言うのもおかしいがね。値段で本の値打ちを決めないほうがいい
コツ太でも、130円って言われたので
店長130円は、うちで売れるかどうかの数字だ。君にとって効いたかどうかとは、何の関係もない
コツ太は9冊の山を見た。
店長この9冊が君に何もしなかったとは、私は思っとらんよ。読んで、そのときは効いて、それで役目が終わった本もある。うちで14円なのは、次の誰かが、あまり探しに来ないというだけだ
店長は平台のほうへ歩いて、帯のついた1冊を引き上げた。
店長今月いちばん出ている本だ
表紙に『10倍成長 2倍より10倍が簡単だ』とあった。
コツ太また、もっとうまくやる本じゃないですか
店長そう思って読むと、腹が立つよ
コツ太腹が立つ
店長君のやってきたことが、いちばん割に合わない道だと書いてある
店長は帯を指で弾いた。
店長言っておくが、私はこの本を全部よしとは思っとらん。なぜそうなのかは、全部正しい。どうやるかは、全部、人を雇える人の話だ
コツ太効かないのを売るんですか
店長なぜ、のほうは効く。それで2,530円なら、悪い買い物じゃない
コツ太は本を受け取って、値段を見た。2,530円。カウンターに並んだ札と小銭は2,130円だった。
コツ太400円、足りないですね
店長まけはせんよ。新刊は定価で売るものでね
コツ太分かってます
コツ太は財布から100円玉を4枚出して、2,130円の上に載せた。
店長いいのかね。せっかく売りに来たのに
コツ太10冊持ってきて、1冊持って帰ります
すずがレジを打った。
すずまたコーヒー飲みに来てください。明日のは中煎りです
コツ太あれ、いくらでした
すず査定のときのはサービスです。ご注文いただくときは700円で
コツ太700円
すずいい豆なので
すずは値段の話を、それ以上しなかった。
コツ太じゃあ、また来ます
すずはうなずいて、それから声を落とした。
すず店長、あんなに喋るの珍しいですよ
コツ太そうなんですか
すずたいてい、いくらです、で終わりなので
奥の作業台では、店長がもう次の段ボールを開けていた。こちらを見てもいない。
コツ太は礼を言って、引き戸を開けた。
半日つぶして、本棚が9冊軽くなって、財布は400円減った。ただ、700円のコーヒーが一杯ついてきたと思えば、勘定はひっくり返る。
そこまで数えて、少し心配になった。9冊に130円しか払わない店が、700円のコーヒーをただで出している。合っているようには見えなかった。
いつか、ちゃんと注文して帰ろうと思った。
第六章 10倍成長
日曜、コツ太は朝から、昨日買った『10倍成長』を読んだ。
最初に出てくるのは、イタリア・ルネサンス期の彫刻家、ミケランジェロの話だった。十七歳のとき、等身大の像を彫ろうとして、自分の技量が足りないことに気づく。表面をなぞることはできても、皮膚の下で何が形を作っているのかが分からない。それで彼は、夜中に施療院の遺体安置所へ忍び込み、何十体も解剖して人体を独学した。見つかれば死罪だった。
ふつうは逆だ。いまの技量で彫れるものを決めて、それを彫る。この男は、彫れないものを先に決めた。そのあとで、彫れるようになる方法を探しにいった。夜中の、遺体安置所へ。
コツ太は一度本を閉じて、湯を沸かした。インスタントの粉を溶かして、ひと口飲む。昨日の店のとは、まるで別の飲み物だった。
読み進めると、なぜ十倍のほうが簡単なのかが書いてあった。
はじめは意味が分からなかった。二倍より十倍のほうが、十倍たいへんに決まっている。
そう思うのは、と著者は書いていた。成果は努力に比例する、と信じているからだ。二倍の成果がほしければ二倍働く。十倍ほしければ十倍働く。その物差しで見れば、十倍は十倍しんどい。
コツ太は自分の六年を思った。まさにその物差しでやってきた。報告書を4ページから22ページにしたのも、要するに、努力の量を増やしたということだった。
ところが、と本は続く。二倍は直線だ。伸ばし続けるには、そのぶん力を注ぎ足すしかない。要するに、賢く働くのではなく、長く働くことになる。十倍は直線ではない。だから、力を注ぎ足す必要がない。むしろ注ぐ量は減る。
コツ太は本から目を上げて、自分で数えてみた。その物差しのまま十倍を目指すと、十倍働くことになる。それはできない。一日は二十四時間しかない。三倍は働ける。四倍も、無理をすればできるかもしれない。十倍は働けない。
そこで著者は、ある研究者との会話を引いていた。利益を一割増やすにはどうすればいいか、という問いは、悪い問いなのだという。答えが多すぎるからだ。値段をいじってもいい。回数を増やしてもいい。経費を削ってもいい。どれもそれなりに正しくて、どれも決め手にならない。道が無限にあると、人は選べない。
ところが十倍にするにはどうすればいいか、と問うと様子が変わる。値段を少しいじる程度では届かない。回数を増やす程度でも届かない。成り立つ道が、数えるほどしか残らなくなる。
だから答えが出る。ほとんど何も効かないから、効くものが見える。
コツ太は、その理屈を二度読んだ。十倍という数字は、達成目標ではなく、選択肢を焼き払うための道具なのだ。
では、やり方を変えるとは、具体的に何をすることなのか。その答えとして、二割と八割の話が出てきた。
自分がやっていることの二割が、成果のほとんどを作っている。残りの八割は、たいして何も生んでいない。だとすれば、やることを増やすのではなく、八割のほうを捨てて、二割に寄せる。それが十倍への道だ、というのが著者の答えだった。
窓の外が明るくなりすぎて、コツ太はカーテンを半分引いた。ついでに本棚を見た。9冊ぶんの隙間が空いている。詰め直していないので、残った本が斜めに傾いていた。
まだ腑に落ちなかった。試しに、毎月の報告書で考えてみた。
いまは22ページある。来月ぶんを44ページにしてくれと言われたら、できる。土日を潰して、かける時間を二倍にすればいい。集める表を増やして、グラフを増やす。やり方は何ひとつ変えなくていい。
では、二割だけ残せと言われたら。22ページの二割は、4ページだ。
コツ太は鉛筆を止めた。全部は載らない。十八ページぶんを載せないことになる。載せないと決めるためには、何を残すか決めなければならない。
4ページ。手が止まったのは、その数字に見覚えがあったからだ。入社した年、同じ一か月ぶんの報告書は4ページだった。六年かけて厚くしてきたものを二割に絞ると、始めた場所へ戻る。
そこで気づいた。44ページなら、その問いは一度も出てこない。つらいが、考えなくていい。土日を差し出せば済む。何を残すかを考えさせるのは、4ページのほうだった。
簡単だ、というのは楽だという意味ではなかった。二倍のほうは、際限なく働き続けることになる。十倍のほうだけが、何を捨てるかを決めさせる。
しかも一度で終わりではないらしい。捨てて残った二割が、しばらくすると新しい八割になる。そこからまた捨てる。著者はそれを何度も繰り返す前提で書いていた。減らす作業のほうが、ずっと続く。
不可能に見える目標のほうが実際的だ、と著者は書いていた。不可能な目標は、今の知識と前提の外へ人を押し出すから、と。
もうひとつ、繰り返し出てくる言い方があった。質を上げて、量を減らす。それを、やることすべてに対して続ける。
コツ太は自分の六年を思った。質を上げたつもりで、量を上げていた。
本を伏せて、コツ太は天井を見た。
昨日のカウンターと同じだった。店長は9冊を130円で置いていって、1冊に2,000円を出した。選べたのは、誰が買いに来るかを数えていたからだ。
じゃあ、自分の報告書を求めているのは誰なのか。
考えかけて、コツ太は止まった。答えは分かっている。課長だ。毎月、課長の机に置いている。読まれた形跡はないが、宛先ははっきりしている。
わざわざ確かめるまでもない、と思った。
そこで、それ以上は考えなかった。
この章の終わりに、要点をまとめた箇条書きがあった。コツ太は上から読んでいった。二倍は八割を保てる。十倍は八割を捨てるしかない。
そこで本を伏せた。しおりも挟まなかった。続きは明日でいい、と思った。
この日、コツ太は二つのことをしなかった。月次報告を誰が読んでいるのかを、それを求めている課長本人に確かめなかったこと。それと、本を最後まで読まなかったこと。
第七章 商品企画部を希望します
日が落ちてから、コツ太は鞄の異動希望調査の紙を出して、六年で初めて、別の字を書いた。
商品企画部を希望します。
書いたら、手が震えた。そのあとで、妙に頭が軽くなった。
行き先が決まれば、二割が決まる。ならば、と月次レポートを開いた。
22ページのうち、企画の判断に効くのはどれか。抜き出してみると、4ページだった。売れ行きの推移と、返品の理由と、店舗別の在庫回転。残りの18ページは、経緯の説明と、去年との比較と、指摘を受けて足した注釈だった。
月曜、コツ太は4ページの報告書を提出した。作成にかかった時間は、いつもの三分の一だった。
課長は受け取って、めくって、二十秒で読み終えた。
課長早いね
コツ太絞りました
課長見やすい
去年と同じ言葉だった。ただ、去年と違って、課長は最後のページまでめくっていた。二十秒。六年かけて、コツ太の紙はようやく二十秒ぶん読まれた。
めくり終えて、課長はそれを引き出しにしまった。何が載っているかではなく、薄くなったな、という顔だった。
席に戻ってから、その二十秒を三回思い返した。
隣の席の後輩が顔を上げた。二年目の彼女は、コツ太が定時で帰るところをまだ一度も見たことがない。
後輩先輩、それ今月の月次ですか。薄くないですか
コツ太22ページを4ページにした
後輩怒られません?
コツ太もう出してきた。見やすいって言われたよ
彼女は笑って、また画面に戻った。
浮いた時間で、企画の草案を三本書いた。データを見ていて前から気になっていた売り場の組み替えと、返品の多い商品の入れ替えと、店舗ごとの品揃えの変更。どれも六年ぶんの数字が頭に入っているから、驚くほど速く書けた。
火曜も水曜も定時で帰れた。入社以来はじめてだった。
これか、とコツ太は思った。本のとおりだ。
第八章 あの表はどこへいった
木曜の朝、電話が鳴った。北関東の営業所からだった。
営業所今月の月次、店舗別の入荷予定が入ってないんだけど
コツ太入荷予定の表は今月から外しました。判断に使わない表だったので
しばらく間があった。
営業所判断って、誰の判断
コツ太は答えに詰まった。
営業所言っとくけどね、あれ、うちでいちばん見てる表だよ。一枚に全店ぶん並んでて、多いところと少ないところが色で分けてある。毎月あれを広げて、みんなで来月の話をしてるの
説明されるまでもなく、その表なら分かる。自分で六年作ってきたものだ。横に十七店舗、縦に品目、多いところが濃い赤で、少ないところが薄い青。毎月おなじ手順で並べ替えていた。ただ、それを広げて来月の話をしている人たちがいるとは、一度も考えたことがなかった。
営業所うちは、パートさんが十四人いるんだ。あれ見てシフト組んで、来週の頭までに希望を聞かないと間に合わない。それが今月だけ無い
コツ太すみません。すぐ送ります
言ってから、午後に会議が二つ入っていることを思い出した。あの表を作り直すには半日かかる。
営業所今月ぶんの元データ、まだあるよね
コツ太あります
来週まで待ってください、とは言えなかった。いちばん見ている表だと言われた直後に、そう言える人間はいない。
コツ太今日中に送ります
電話を切っても、しばらく受話器から手が離せなかった。
六年で初めて、自分の作った表を褒められた。褒めた相手は、怒っていた。
十四人。顔も名前も知らない。会ったこともない。それでもその人たちの来週の予定は、自分が「判断に使わない」と言って消した一枚の表の上に乗っていた。
判断に使わない。誰の判断だ、と聞かれて答えられなかった理由が、そこにあった。
コツ太は先月のファイルを開いた。
入荷予定の表は、消したのではなく、作るのをやめていた。元になるのは各店から上がってくる週次のデータで、それを店舗別に並べ替えて、多い少ないで色を分ける。手順は体が覚えている。六年やってきたのだから。
ただ、先月までは月初にまとめて作っていた。今月は途中で捨てたので、材料が集まっていない。十七店舗ぶんを一件ずつ拾い直すことになった。
昼は抜いた。午後の会議は二つとも出た。片方は自分の議題ではなかったので、机の下で表を触っていた。
数字を入れながら、コツ太は数えていた。十七店舗。行にすると二百近い。色を分ける条件を三つ。それを、判断に使わないと言って消した。消すときにかかったのは、たぶん十秒だ。行を選んで、削除を押しただけだった。
夕方、送信ボタンを押した。半日で終わるつもりが、一日かかった。北関東からは、ありがとう、とだけ返ってきた。怒っていたときより短かった。
企画の草案は一行も進まなかった。三本のうち、どれにも触っていない。浮いたはずの時間は、そっくり同じ場所に戻っていた。
その夕方、課長に呼ばれた。役員会から戻ったばかりで、ネクタイが少しゆるんでいた。
課長営業所から電話来た?
コツ太来ました。もう送りました
課長あとさ、今日の役員会で、去年の同じ月と比べてどうなのって聞かれたんだ。前は載ってたよね、あの比較の表
コツ太載せてました
課長僕はあれを説明に使ってたんだよ
コツ太は返す言葉がなかった。
課長絞るなって話じゃないよ
課長は4ページをもう一度めくった。
課長報告書そのものはいい。読みやすいし、説明する側も助かる。ただ、消したぶんを誰が使ってたかは、消す前に分かるはずだったろう
コツ太分かりませんでした
課長聞けば分かる
それだけ言って、課長は4ページを引き出しにしまった。
六年ぶんの18ページのうち、少なくとも一枚は、毎月ちゃんと働いていた。それを知ったのが、消したあとだった。
席に戻ると、書きかけの企画書が開いたままだった。三本のうち一本も、今週は進んでいない。浮いたはずの時間は、消した表を作り直すのに使った。差し引きでいえば、22ページを作っていた先週と、たいして変わらなかった。
第九章 渡す相手がいる人の話
その夜、コツ太は日曜から伏せたままだった本を開いた。
捨てろ、と書いてあるすぐそばに、こうあった。八割を手放すというのは、たいていの場合、それを引き受ける人を雇うということだ。
読んでいなかったわけではない。日曜に、たしかに読んでいる。
読んで、そのまま通り過ぎていた。
著者はここで、自分たちの前の本を持ち出していた。何かをやろうとするとき、人はまず「どうやるか」を考える。そうではなく、「誰とやるか」を先に決めろ。やり方は、組む相手が決まってから考えればいい。その本の題が、そのまま『WHO NOT HOW「どうやるか」ではなく「誰とやるか」』だった。
日曜のコツ太は、これを読んで、なるほどと思った。そして、渡す相手が自分にもいるつもりで、月曜を迎えた。
いなかった。
コツ太には、雇う権限がない。誰に渡すかを決める立場でもない。同じことをやると、渡したことにはならない。ただ落としただけになる。
ページを繰ってみると、同じ形の話が続いていた。年に150日以上、何も予定を入れない日を取れ。自分がいなくても回る会社を作れ。繰り返しできる仕事は仕組みにして、人に任せろ。
どれも、渡す相手がいる人の話だった。
店長が「どうやるかは、全部、人を雇える人の話だ」と言ったのは、これのことだ。ひとつ残らず、そうだった。
そして一箇所、はっきり書いてあった。学校教育と、従来の企業構造は、忙しさと努力を基準にした量的で直線的な時間モデルの上にできている、と。著者は会社そのものを敵に回している。
そこまで読んで、最後のページまで来ていた。半分から先まで行った本が、一冊増えた。
コツ太は本を閉じて、天井を見た。
自分が読んでいたのは、自分の環境を否定してくる本だった。それでも、大半は効いていた。
効いたところは、はっきりしている。量を増やすのをやめて、減らしたことだ。22ページを4ページにしたら、課長は六年で初めて最後のページまでめくった。質を上げて、量を減らす。著者が何度も書いていたことだ。自分は六年間、質を上げたつもりで、量のほうを上げていた。そこは当たっている。
効かなかったのは、その次だった。何を捨てるかを、自分の判断だけで決めたこと。
本を売った土曜の店を思い出した。店長は9冊を130円で手放した。あの9冊を手放せたのは、探しに来る客がいないと分かっていたからだ。長年あの路地に立って、誰が何を買っていくかを数えてきた。数えたうえで捨てている。
自分が消したのは18ページ。22ページから4ページに削った、その差だ。そのうちの一枚に、北関東の十四人が乗っていた。
コツ太は数えていなかった。誰も読んでいないと思っていた。思っていただけで、一度も確かめていない。
同じ「捨てる」でも、店長は数えてから捨て、自分は数えずに捨てた。
第10章 五分だけやるか
翌週の月曜、コツ太は4ページを持って課長の席へ行った。
コツ太このレポート、課長が説明に使うのはどこですか
課長は少し驚いた顔をして、それから紙をめくった。
課長売れ行きの推移と、返品の理由。あと去年との比較
コツ太三つですね。営業所は入荷予定を使ってました。あわせて四つ
コツ太は手元の4ページを見た。
コツ太いまの4ページに、その四つを揃えると9ページになります。元は22ページでしたから、残りの13ページは要らないことになります
課長うん
コツ太消していいですか
言ってから、自分でおかしくなった。同じことを、消したときは誰にも聞かずにやったのだ。
課長いいよ。あれ誰も見てない
あっさりしていた。六年かけて足してきたものが、三十秒で半分以下になった。
課長ついでに聞くけど、なんで急に削りだしたの
コツ太は正直に答えた。企画をやりたいと思っていること。そのための時間がどうしても取れなかったこと。だから減らそうとして、間違えたこと。
課長は返事をせずに、机の引き出しから紙を出した。異動希望調査だった。コツ太の字で、商品企画部を希望します、と書いてある。
課長希望調査、読んだよ
コツ太はい
課長六年目で初めてだよね、書いてきたの
コツ太はい
課長は紙を戻して、少し座り直した。
課長先週の件だけどさ。こっちも悪かった
コツ太
課長あの比較の表、毎月役員会で使ってたんだよ。使ってるって、君に一度も言ってない。六年ね
コツ太知らなかったです
課長知らせてなかったんだよ、こっちが
課長は少し言いにくそうにした。
課長それとね。受け取ったとき、僕は気づくべきだった。毎月使ってる表なのに、無くなったのが目に入らなかった。薄くなったな、としか思わなかったんだ
コツ太見やすいって、言ってました
課長言った。中身を見ないで言った
課長は頭を下げるでもなく、当たり前のことのように言った。コツ太は返事を探して、結局「はい」としか言えなかった。
課長希望した異動は、すぐには無理だ。商品企画は枠がない
分かっていた。それでも、少し息が詰まった。
課長ただ、来月の販売会議あるだろ。あそこで五分だけやるか。君の企画
コツ太は顔を上げた。
コツ太五分ですか
課長五分だ。長いと聞いてもらえないから
その週、レポートは22ページから9ページになった。浮いた時間で、企画の草案を三本から一本に絞った。五分で話せるのは一本だけだからだ。
異動は決まっていない。企画が通るかも分からない。机の上の仕事も、たいして減っていない。
変わったのは、行き先の欄が埋まったことだけだった。それだけで、どのページを厚くするかを迷わなくなった。
第11章 エピローグ
金曜の夜、コツ太は財布からレシートを出した。本を売った土曜のぶんが、まだ入れっぱなしになっていた。
10冊売って2,130円。本が2,530円。差し引き400円の持ち出しだ。
そのかわり、700円のコーヒーを飲んで、聞いたことのない話を聞いて、面白そうな本を1冊持って帰った。
その本のおかげかどうかは分からない。ただ、あの土曜から色々あった。定時で帰れた日が三日あって、六年ぶん読まれなかった紙が二十秒読まれた。北関東から怒られて、昼を抜いて表を作り直した。企画は一行も進まなかった。それから、来月の会議で五分もらった。
400円にしては、ずいぶん得のある買い物だった。怒られたぶんも込みで、そう思うことにした。
コツ太はレシートを畳んで、鞄に戻した。
売る本はもう無い。買いたい本があるわけでもない。それでも、気がつくとあの路地へ折れていた。
今日はちゃんと注文しよう、と歩きながら思った。あの店を出るときにそう決めたことを、ずっと覚えていた。
引き戸を開けると、すずがカウンターから顔を上げた。
すずあ、来た
すずは布巾を置いて、身を乗り出した。
すずどうでした
コツ太半分だけ効きました
すず半分
コツ太捨てるところまでは書いてありました。捨てた先に人がいる場合の話は、書いてなかったです
すずは手を止めて、少し困った顔をした。何の話か分からない、という顔だった。当たり前だ、とコツ太は思った。自分だって、本を最後まで読むまでは分からなかった。
奥から声がした。
店長だから、どうやるかは君の話じゃないと言ったろう
すずが、ああ、という顔でそちらを見た。
コツ太は席についた。
コツ太ところで、今日のは中煎りでしたっけ
すず昨日が中煎りです。今日は深煎りのマンデリン
コツ太じゃあ、それで

あとがき

結論から書く。この本は会社員に向けて書かれていない。それでも私は、買ってよかったと思っている。

この手の本を読んで何かが変わったことは、私の記憶にはほとんどない。長いあいだ本のせいだと思っていたが、たいていは自分が半分しか実行していないだけだった。今回は違って、半分すら実行できない理由が本の側にあった。

私の失敗:手放したつもりで、落としただけだった

抱えている作業を減らすと決めて、私は黙って手を引いたことがある。数日後に「あれ、どうなってる」と聞かれて、誰にも言っていなかったことに気づいた。手放したつもりが、落としただけだった。しかも落ちた先の人は、私の側からは見えない。

八割を手放すというのは、経営者には「人を雇う」ことだ。私には「誰かに押しつける」ことにしかならなかった。同じ行動が、立場で別のものになる。

私の意見:10倍は「量」ではなく「選び方」の話だ

会社員向けでないと私が言うのは、読んだ印象ではない。著者が自分でそう書いている。

So really what I take from reading those first 100 pages is another nudging that I need to make a career shift.

── Dan Sullivan & Benjamin Hardy, 10x Is Easier Than 2x

拙訳:最初の百ページを読んで私が受け取ったのは、転職しろという、もうひとつの後押しだった。

第四章に、草稿を読んだ大企業の中間管理職の感想が載っていて、著者はそれを打ち消さない。第一章の「二倍の組織にいる十倍の人」も、答えは会社を移ることだった。三度、同じことを言っている。

それでも私が買ってよかったと思うのは、「なぜ十倍のほうが簡単なのか」だけは、権限が無くても効いたからだ。目標を大きくすると、やり方の候補が減って決まる。これだけで元は取れました。

落胆するのは「どうやるか」のほうだ。 八割を引き受ける人に渡せ、年に150日休め、自分がいなくても回る会社を作れ。ひとつ残らず、渡す相手がいる前提だった。

雇えないと分かるのも、私には収穫だった。曖昧に憧れて消耗するより、線を引けるほうが早い。

本の二割を持ち帰れれば、良書だ

ここまで書くと本を責めているように見えるが、そうではない。

この手の本 ── ノウハウ、発想の転換、自己啓発 ── を、書いてあるとおりに実行できたことが私にはほとんどない。理由は単純で、私の側に前提がそろっていない。著者の環境と私の環境が違う。当たり前の話なのだが、読んでいる最中はきれいに忘れる。無理に全部やろうとすれば、たいてい形だけ真似て終わる。

だから私は、本の二割を自分の環境に落とし込めれば良書だと思っている。ここで言う二割は、この本が言う二割とちょうど同じ形をしている。全部やろうとして全部落とすより、効く一点を残すほうがいい。今回、私が残したのは「なぜ十倍のほうが簡単か」だけだった。それで足りている。

一冊しか読んでいないと、その一冊の思想に寄る。寄るのが怖いなら、読む冊数を増やすしかない。たくさん読むと、意識しないところで別々の本のエッセンスが混ざる。 混ざったものが、最後に自分の環境で使える形になって残る。二割ずつ持ち帰った本が十冊あれば、自分のやり方が一つできる。

私はこの店の紹介文に「十日後、百日後にはなぜか行動が少し変わっている」と書いた。あの「なぜか」の中身は、たぶんこれだ。一冊が効いたのではなく、持ち帰った二割が何冊ぶんか溜まって、勝手に混ざった。 だから、どの本が効いたのかを自分でも言えない。

書きながら気づいたが、これは自己啓発書に限った話ではないのだろう。小説でも、歴史でも、全部を持ち帰る読者はいない。 何が残るかが読む人によって違うから、同じ本の感想が人によって違う。二割を選ぶ作業そのものが、読書なのかもしれない。

この本

  • 原題:10x Is Easier Than 2x(2023)
  • 邦題:『10倍成長 2倍より10倍が簡単だ』(2024)

こんな人に読んでほしい/見送っていい人

おすすめ度 ★★★★☆

こんな人に読んでほしい:頼まれたことは全部やっているのに評価が動かない人/「やることを減らせ」と言われても、どれを減らすか決められない人/異動希望の紙に毎年「特にありません」と書いている人。

見送っていい人:具体的な時間術や仕組み化のノウハウが欲しい人。この本には無い。

「なぜ十倍のほうが簡単か」だけ持ち帰るつもりなら、それで元は取れる。

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神保 文吾(じんぼ ぶんご)
神保 文吾(じんぼ ぶんご)
ブログ・コツ活 書評担当
ブログ・コツ活で書評を担当している、神保文吾(じんぼ ぶんご)です。ペンネームですが、書いているのは生身の一人の人間です。学生時代は神保町の古書店でアルバイトをし、毎日本を読む/聞く習慣だけは手放さずにきました。一冊で人生が変わることはありません。けれど読み続けると、十日後、百日後にはなぜか行動が少し変わっている——文字が静かに人を動かす手応えを、何度も味わってきました。流行に踊らされず、盲信もせず、それでも頭の片隅に置きたい一冊を手渡したい。それがコツ活を続ける理由です。
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