「置いてきぼり」になる贅沢。FOMOを捨ててJOMOを拾え【『Keep Going』2/3】
「知らないこと」が恐怖になっている
私たちは病気にかかっている。その病の名はFOMO(Fear Of Missing Out:見逃すことへの不安)だ。SNSのタイムラインを1時間見ないだけで、世界のトレンドから取り残され、自分だけが重要なニュースを知らないのではないかと動悸がする。友人が参加しているイベント、話題のドラマ、新しいAIツール。それらをすべて把握していないと、現代人として「負け」だと思い込まされている。
しかし、オースティン・クレオンは著書『Keep Going』の中で、この強迫観念を一刀両断する。「ニュースを追いかけることは、あなたのクリエイティビティにとって有害でしかない。」なぜなら、現代のニュースのほとんどは、あなたの不安を煽り、クリックさせるために設計されたノイズだからだ。それらを摂取し続けることは、ジャンクフードで胃袋を満たすのと同じで、精神を肥満させ、動きを鈍くする。
JOMO(見逃す喜び)という特権
FOMOの解毒剤としてクレオンが提示するのが、JOMO(Joy Of Missing Out:見逃す喜び)だ。これは「あえて情報を遮断し、その静寂を楽しむ」という、現代における最高の贅沢である。
想像してみてほしい。世間で何が炎上しているのか全く知らない状態を。誰が何に対して怒っているのか、一切関知しない午後を。そこには、他人の感情に振り回されない、圧倒的な自由がある。あなたがトレンドを知らなくても、地球は回り続ける。そして重要な情報ならば、あなたがスマホに張り付いていなくても、必ず誰かが教えてくれる。意図的に「時代遅れ」になること。それは、情報の濁流から身を守り、自分の頭で考えるための唯一のシェルターなのだ。
「機内モード」で人生を取り戻す
JOMOを実践するために、山奥に引っ越す必要はない。手元のスマホを操作するだけでいい。クレオンも実践している通り、創作活動に集中したい時は、迷わず「機内モード」にするのだ。
通知バッジの赤い丸は、あなたの集中力を奪うために計算され尽くした「罠」だ。それに反応するのは、パブロフの犬と同じ条件反射に過ぎない。人間としての尊厳を取り戻したければ、自分から接続を切るしかない。「今は繋がらない」という選択こそが、あなたが自分の時間の支配者であることを証明する行為だ。孤独を恐れるな。孤独の中にしか、オリジナリティは育たない。
寝室から「世界」を追い出せ
JOMOへの第一歩として、私が強く推奨するのが「寝室へのスマホ持ち込み禁止」だ。多くの人は、スマホを目覚まし時計代わりに使っている。そのせいで、朝一番の無防備な脳に、SNSのノイズや仕事のメールが雪崩れ込んでくる。これでは、起きた瞬間から他人の人生を生きることになる。
だからこそ、あえて「単機能の道具」を使う。ドイツの巨匠ディーター・ラムスがデザインした『BRAUNのアナログ目覚まし時計』だ。ここにはブラウザもなければ、通知音もない。あるのは、静かに時を刻む機能美だけだ。スマホをリビングに置き去りにし、この小さな黒い箱だけを枕元に置く。それだけで、あなたの夜と朝は、再びあなただけのものになる。静寂の中で目覚める贅沢を、所有欲の満たされるミニマリスティックなこの目覚まし時計が教えてくれるはずだ。