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「最高」を求めるな、不幸になるぞ。マキシマイザーの悲劇と解【『選択の科学』3/3】

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完璧主義という病

あなたは、新しいパソコンや家電を買うとき、あらゆるレビューサイトを巡回し、スペックを比較し、少しでも安い店を探し回らないと気が済まないタイプだろうか。もしそうなら、あなたは心理学で言う「マキシマイザー/Maximiser(最大化人間)」かもしれない。

コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授は、著書『選択の科学』の中で、このタイプの人々が抱える深刻なジレンマを指摘する。彼らは常に「最高(Best)」の選択肢を追求し、妥協を許さない。就職も、結婚も、ランチの店選びでさえも、全ての選択肢を検討し、最適解を選ぼうとする。

一見、これは賢い生き方に思える。実際、研究によれば、マキシマイザーはそうでない人々に比べて、より良い条件で就職し、より高い年収を得ている傾向がある。客観的なスペックでは、彼らは勝者だ。 だが、衝撃的な事実がある。マキシマイザーは、客観的な結果が良いにもかかわらず、主観的な幸福度は著しく低く、うつ病のリスクが高いのだ。 なぜ、最高を手に入れたはずの彼らが、最も不幸なのか?

「もっと良いもの」の呪い

答えはシンプルだ。

彼らは選んだ後も、「本当にこれで良かったのか?」「もっと良い選択肢があったのではないか?」と悩み続けるからだ。 最高を求めて走り続ける彼らにとって、ゴールは常に動く。SNSを開けば、自分より良い暮らしをしている誰かが必ずいる。無限の選択肢がある現代において、「これが世界で一番だ」と確認することは不可能だ。 だから彼らは、どんなに良いものを手に入れても永遠に満たされず、自己嫌悪と後悔(「あっちを選べばよかった」という機会費用)のループに陥る。

一方、「サティスファイサー/satisficer(満足者)」は違う。彼らは自分の中に「ここまで満たせばOK」という明確な基準(Good enough)を持っている。その基準を超えたら、そこで探求をやめ、選んだものを愛する。 アイエンガー教授は語る。「選択とは、正解を探すことではない。選んだものを正解にしていくプロセス(Create)なのだ」。 幸福なのはどちらか、言うまでもない。「最高」は幻想であり、「満足」こそが現実なのだ。

地位財の競争を降りる

マキシマイザーの呪いから抜け出す唯一の方法は、終わらない地位財獲得競争をやめ、自分の納得のいく「定番」を決めてしまうことだ。決まった瞬間、憑き物が落ちたかのように楽になる。

例えば、流行りのレアスニーカーを血眼になって追いかけるのはもうやめよう。「もっと良いものがあるはずだ」という幻想を捨て、「これでいい」と言える強さ、そしてセンスを持つこと。実際のところ、それが世界最高の靴かもしれないし、実はそうではないかもしれない。だが重要なのは、色々履いてきたがこれが圧倒的に十分(Good enough)であり、これさえあればもう他の靴を比較検討する必要がなく、もはや靴全般への情熱がなくなるほど自然に、満足してしまえることだ。

「これで十分」と言える強さ

ちなみに私が提案する、スニーカー探しの終着点は『New Balance 990』だ。 スティーブ・ジョブズも、ラルフ・ローレンも愛用したこのシリーズは、「1000点満点中990点」というコンセプトで作られた。雲の上を歩くような履き心地、どんな服装にも馴染むグレーの色調、Made in USAの誇り。

妥協という言葉はネガティブに使われがちだ。だが、無限の選択肢の前では、妥協(サティスファイ)こそが最高の知恵となる。New Balance 990を履いて歩くとき、私にとってはただの靴を履いているのではない。「私はもう、終わりのない比較検討レースには参加しない」という意思表示をしているのだ。 「これでいい、これがいい」。そう言えるモノを持つこと。それは諦めではない。迷いを断ち切り、自分の足で人生を歩き始めるための、賢明な勝利宣言なのだ。 迷うのをやめろ。紐を結べ。そして、画面の中の比較サイトではなく、目の前の道を歩け。

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