新しいアイデアばかり探していないか【『もっと!』2/6】
素晴らしいアイデアがいつも実行されずに終わる理由
ビジネスの現場や個人の学習において、新しいアイデアを思いついた瞬間ほど興奮するものはない。この新規事業なら市場を独占できるかもしれない、この最新のツールを導入すれば業務効率が劇的に上がるに違いない。そうしたひらめきを得たとき、私たちは強烈な熱量で企画書を書き始めたり、新しいノウハウ本を何冊も買い込んだりする。タイパを求めるからこそ、常に今よりさらに良い方法を探し求め、インプットに多くの時間を費やすのだ。
しかし、その最初の熱狂はどれくらい続くだろうか。いざ企画を具体的な作業に落とし込み、地味な調整や泥臭いエラーの修正が始まった途端、あの輝いていたモチベーションは嘘のように消え失せてしまう。そしてまた、別の新しくて画期的なアイデアに目を奪われ、そちらに飛びついてしまう。このようにアイデアばかりが膨らみ、何も最後まで完遂できないノウハウコレクターのような状況に陥っていないだろうか。
欲望の物質と制御の物質
精神科医のダニエル・Z・リーバーマンとマイケル・E・ロングは、共著『もっと!』の中で、このようなアイデアだけで実行が伴わない状態を、脳内の未来を追い求める物質の回路の性質から鮮やかに説明している。両氏によれば、この物質の働きには大きく分けて二つの種類がある。一つは、新しい可能性に対してもっと欲しいと熱狂をもたらす「欲望の物質」。そしてもう一つは、その欲望を手に入れるために、論理的に計画を立てて計算する「制御の物質」である。
私たちが新しいビジネスモデルを思いついて興奮しているとき、脳内では欲望の物質が激しく分泌されている。この物質は想像上の未来を色鮮やかに描くことには長けているが、現実の退屈な作業には一切の関心を持たない。そのため、アイデアが現実の作業に移行し、地道な実行プロセスが求められる段階に入った瞬間、欲望の物質の分泌は停止し、私たちは急激にやる気を失ってしまうのだ。
ひらめきを現実に変えるための地味な作業
本当に価値のあるビジネスパーソンとは、次々と新しいアイデアを思いつく人間ではない。暴走する欲望の物質を意図的に抑え込み、冷徹な制御の物質を使って計画を実行し、最終的には今ここの現実に向き合う現在志向の力を持った人間である。
アイデアを現実に変えるためには、どこかの段階で未来の可能性に熱狂するのをやめ、目の前にあるキーボードを叩き、クライアントと地道に交渉し、退屈なデータ入力を繰り返すという現実の作業へとシフトしなければならない。天才的なひらめきなどなくても、この脳内物質の切り替えを的確に行い、退屈な作業を淡々と続けられる者だけが、最終的な成果を手にすることができるのである。アイデアを生み出すことと、それを形にすることは、まったく別の脳の機能を使っているのだ。
アイデアの奴隷にならず最後までやり遂げられるか
冒頭の問いに戻ろう。あなたが次々と新しいビジネス書を読み漁り、画期的なツールに飛びついているのは、本当に現場の問題を解決するためだろうか。それとも、単に欲望の物質による一時的な興奮を味わいたいだけなのだろうか。私たちが実行力を持たないコレクターから抜け出すためには、アイデアを追い求める快感を意図的に遮断し、退屈な実行プロセスに耐え抜く強靭なマインドセットが不可欠である。
最初の熱狂が冷めた後に必要なのは才能ではなく、情熱と粘り強さであることを科学的なデータで証明したアンジェラ・ダックワースの『GRIT やり抜く力』は、そのための確かな支えとなる世界的ベストセラーだ。欲望による興奮が冷めた後にこそ、本当の勝負が始まる。その一冊が、あなたのアイデアを単なる妄想から現実の成果へと静かに、しかし確実に変えていくはずだ。
『もっと!』シリーズ (全6回)




