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アルゴリズムの「おすすめ」を破壊せよ。フィルターバブルを抜け出す練習【『何もしない』5/6】

kotukatu
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「あなたへのおすすめ」という名の牢獄

現代のネットワーク社会において、私たちは常にAIによる「手厚いおもてなし」を受けている。 YouTubeを開けば「あなたが見たいであろう動画」が並び、Spotifyは「あなたの好みに完璧に合致するプレイリスト」を自動生成する。SNSのタイムラインも同様だ。私たちは、自分の欲求がシステムによって先回りされ、瞬時に満たされることを「便利だ」と思い込んでいる。

しかし、『何もしない』の著者ジェニー・オデルの視点に立てば、これは極めて危険な状態である。アルゴリズム的な「絞り込み」は、望むと望まざるとにかかわらず、見たい情報だけを優先的に表示させる。その結果、私たちは自身の価値観が「バブル(泡)」の中に限定されてしまう状況に幽閉されるのだ。 最適化された情報の無菌室の中では、私たちは自分の鏡像と対話しているに過ぎず、真の意味での「未知なる他者」や「異質な価値観」と衝突することは永遠にない。

セレンディピティ(偶然性)の喪失

このアルゴリズムによる最適化が排除しようと目論むものがある。それは「ノイズ」や「無駄」、そしてオデルが指摘する「セレンディピティ(偶然のできごと)」だ。

彼女は、「人生を意義あるものにしてくれるものごとの多くが、偶然のできごとや、妨害、セレンディピティに由来する」と述べている。 私たちが本当に心を動かされ、自分の価値観(世界の中心)が揺さぶられるのは、自分が検索窓に打ち込んだキーワードからではなく、予想もしていなかった他者の言葉や、偶然の回り道での唐突な出会いによってである。 すべてが「能率化」されたタイムラインの中では、このノイズが入り込む余地がない。私たちは快適さと引き換えに、世界を現実感を伴って認識する機会を失っているのだ。

「脱中心化」へ向かうための練習

フィルターバブルを打破し、自分の部屋が「世界の中心ではない」ことを思い出すにはどうすればいいのか。それは、自分が「すでに知っているもの・好んでいるもの(検索ワード)」のネットワークの外側へ、意図的に身を投じることだ。

アルゴリズムが学習できない場所へ行くこと。予測不可能な「偶然」を受け入れ、そのノイズの中に自らの観察眼で意味を見出すこと。それこそが、情報に最適化された脳を解毒し、「内側」にも「外側」にも開かれている「あわい(狭間)」の状態を取り戻すための具体的なアクションとなる。

アルゴリズムを破壊する一冊:『セレンディップの三人の王子』

私たちが自らを閉じ込めているフィルターバブルを破壊し、偶然性を強制的に取り戻すための最高のアナログギア。それは、セレンディピティという言葉の語源となった古い寓話、『セレンディップの三人の王子』の紙の本である。

18世紀、イギリスの作家ホレス・ウォルポールは、このペルシャのおとぎ話を読み、「彼らは、探し求めてもいなかったものを、偶然と聡明さによって発見していく」という点に感銘を受け、「セレンディピティ」という言葉を生み出した。 この三人の王子たちは、Googleマップで最短ルートを検索したり、アルゴリズムのおすすめに従ったりはしない。ただ物理的な世界を歩き、偶然出くわした些細な痕跡(ノイズ)を自らの深い観察眼によって読み解き、真実に辿り着くのだ。

休日の午後、スマートフォンを別の部屋に置き、このアナログな寓話のページをゆっくりと捲る。 目的ありきの「能率化された検索」を放棄し、探し求めてもいなかったものを発見する王子たちの物語に没入すること。これこそが、シリコンバレーのアルゴリズムに対する最も知的で、最も効果的なレジスタンス(抵抗)の形なのである。

『何もしない』シリーズ (全6回)

資本主義への最大の反逆は「何もしない」ことである【『何もしない』1/6】
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週末の「デジタルデトックス」という罠。私たちはどこへも逃げられない【『何もしない』2/6】
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アルゴリズムの「バブル」を破壊する。奪われた関心を取り戻す練習【『何もしない』3/6】
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目的地を捨てる練習。Googleマップと「効率的な移動」への反逆【『何もしない』4/6】
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