AIの出力はあなた自身の思考の鏡である【『これからのAI』2/6】
AIの回答が平凡だと嘆いていないか
ChatGPTに企画を考えさせたが、ありきたりな答えしか返ってこなかった。あるいは、AIに文章を書かせたが、どこかで見たような内容で個性が感じられない。AIを使い始めた多くのビジネスパーソンが、一度はこのような不満を抱く。AIに任せたにもかかわらず、期待外れの結果に終わり、やはり最後は人間が考えないとダメだと、元のやり方に戻ってしまうのだ。
しかし、そのAIの回答が平凡だったのは、AIの能力が低かったからだろうか。あるいは、AIに与えた問いそのものが平凡だったからではないだろうか。AIはこちらが入力した情報や文脈、さらに質問の解像度に合わせて出力を生成する。つまり、AIから返ってくる答えの質は、あなたがそれまでにどれだけ深く考え、言葉を練り上げたかという思考の深さを冷酷なまでに反映しているのである。
思考を言語化するプロセスが重要である
ペンシルベニア大学ウォートン校教授のイーサン・モリックは、著書『これからのAI、正しい付き合い方と使い方 「共同知能」と共生するためのヒント』の中で、AIは私たちの思考を拡張する鏡であると述べている。同氏によれば、AIとのやり取りにおいて最も価値があるのは、最終的な出力結果そのものよりも、その出力を得るために自らの考えを整理し、言語化していくプロセスにある。
曖昧な問いを投げれば、AIは曖昧な答えを返す。具体的で、文脈に富み、独自の視点を含んだ問いを投げれば、AIはそれに応えるように鋭い洞察を返してくる。AIを使いこなすということは、自分が何を求めているのか、何が本質的な課題なのかを徹底的に突き詰め、正確に言葉にするトレーニングに他ならない。AIという鏡に映し出されるのは、あなたの知性の解像度そのものだ。AIの出力が低いと不満を言うことは、鏡に映った自分の顔が気に入らないと怒るようなものなのである。
問いを磨くことで自分自身の知性が高まる
AIとの共生において、人間が果たすべき最も重要な役割は問いを立てることである。答えを見つける作業はAIが得意とする領域だが、何が解くべき価値のある問題なのかを定義し、どのような角度から光を当てるかを決めるのは、依然として人間の領域だ。私たちがAIから素晴らしい回答を引き出そうと奮闘する中で、実は自分自身の問いを立てる能力が、これまでにないスピードで磨かれているのだ。
良い出力を得るために、前提条件を整理し、目的を明確にし、制約条件を付け加える。このプロンプトを練り上げる作業は、実は高度な論理的思考の訓練である。AIという反応の良い壁打ち相手がいることで、私たちは自分の思考の甘さや、言語化できていなかった曖昧な部分を即座に突きつけられる。AIの出力を改善しようとする努力そのものが、結果としてあなた自身の知性をかつてない高みへと引き上げてくれるのである。
AIへの問いを自らへの問いに変えられるか
あなたがAIから得ているその答えは、本当にAIの限界だろうか。それとも、あなたの問いの限界だろうか。私たちがAIを真の共生パートナーとして活かし、次元の違うアウトプットを出すためには、安易な回答を求める姿勢を捨て、自らの思考を限界まで研ぎ澄まして問いを立てるマインドセットが不可欠である。
自分自身の人生を切り拓くための問いの技術を深く掘り下げた名著、粟津恭一郎の『「良い質問」をする技術』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。AIに何を答えさせるかではなく、自分が何を問うべきか。その一冊が、あなたとAIとの対話を、ただの作業から知的な創造のプロセスへと変えてくれるはずだ。鏡に映る自らの思考の質を、あなたはどこまで高めることができるだろうか。
『これからのAI』シリーズ (全6回)




