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「観客」を完全無視せよ。評価を捨ててエゴを貫く創造の哲学【『リック・ルービンの創作術』3/3】

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誰かのために作ったものは、誰の心にも届かない

現代のビジネスやマーケティングの世界では、「顧客第一」「市場のニーズに応えろ」という言葉が絶対的な金科玉条とされている。 しかし、音楽界の伝説的プロデューサーであるリック・ルービンは、名著『リック・ルービンの創作術』の中で、その常識を真っ向から否定する。「観客(オーディエンス)のことなど、一切考えるな」と言い切るのだ。

彼がプロデュースし、世界中で何千万枚も売れた歴史的な名盤たちは、決して「世界の大衆にウケるために」計算して作られたものではない。アーティストが「自分自身の魂を震わせるため」だけに生み出した純粋で狂気的な熱量が、結果として他者へと伝播し、世界を熱狂させただけなのだ。

最初から「誰かに気に入られよう」「バズろう」として作った作品は、どこかで見たことのある安全で綺麗な「製品」に成り下がる。そこには一切の魂が宿らない。 一方で、作り手が自分の内なる真実にのみ忠実に、他人の目を完全に無視して作り上げたものは、たとえ歪で狂っていても、個人の壁を突き抜けて「普遍的な人間の感情」へと到達する。クリエイターにとって世界への最大の奉仕とは、大衆に迎合することではなく、自分自身の最高到達点をむき出しで見せつけることなのだ。

成功は「副産物」であり、目的ではない

もしあなたが、数字や他人の評価(SNSのいいねや売上)のために何かを作っているなら、それはクリエイションではなく、単なる「ギャンブル」である。

ルービンにとって、作品が自分の中で完成した時点で、すでに「大成功」は確定している。なぜなら、自分の中にあるモヤモヤとしたイメージを具現化し、世界に引っ張り出せたという事実だけで、魂は完全に満たされるからだ。 その後にそれが世間で売れるかどうか、他人に評価されるかどうかは、明日雨が降るかどうかと同じ「天候」のようなものである。自分では一切コントロールできないし、気にする必要すらない。

成功を目的(ゴール)に設定すると、人間は失敗や炎上を恐れて冒険ができなくなる。しかし、創造を「自己探求のプロセス(旅)」だと捉えれば、たとえ誰にも評価されなくても、すべての実験は成功の一部になる。夜、誰にも見せない文章を書いたり、自分のためだけに料理を作ったりすることは、決して時間の無駄ではない。それは、あなたがあなた自身であるための、最も重要で神聖な精神的活動なのだ。

「プロ」という仮面を脱ぎ、アマチュアとして遊べ

私たちは大人になるにつれて、「自分は素人だから」と謙遜し、無邪気に何かを創造することをやめてしまう。だが、ルービンは「経験や知識は、時として最大の邪魔になる」と警告する。 知識やテクニックが増えるほど、私たちは「失敗しない正解」を知ってしまい、驚きや発見のない安全な道ばかりを選ぼうとするからだ。

最高のクリエイターは、いつだって「永遠のアマチュア」である。彼らは自分の知識におごることなく、子供のような無知と好奇心を持って世界と対峙する。 今夜、もしあなたが何かを表現したいと思うなら、上手くやろうとする必要は全くない。ただ、その衝動に正直であればいい。評価という重たいコートを脱ぎ捨てて、裸の感性で泥遊びをすればいいのだ。

大衆を無視した「純度100%の暴走盤」を聴け

「市場のニーズを完全に無視する」というルービンの哲学が、いかに圧倒的な結果を生み出すか。それを頭ではなく肉体で理解するために、彼がプロデュースした「妥協ゼロの歴史的暴走盤」を聴くことを強く推奨する。

例えば、スレイヤーの『Reign in Blood(レイン・イン・ブラッド)』。ラジオで流すことや商業的な聴きやすさを一切無視し、ただ「世界で一番速くて過激な音を出したい」というエゴだけを限界まで追求した結果、スラッシュメタルの歴史の頂点に君臨してしまった奇跡のアルバムだ。

あるいは、カニエ・ウェストの『Yeezus(イーザス)』。大衆が求めるキャッチーなヒップホップを全否定し、不快なノイズとエゴを剥き出しにしたこの異形のアートは、ルービンの「極限の引き算」によって完成し、結果的にシーンの流行を完全に変えてしまった。

人生そのものが一つの巨大なアート作品であるとするなら、あなたはその作品を「誰のため」に作っているだろうか。他人の期待や「いいね」に応えるために綺麗に編集された人生など、視聴率狙いの陳腐なテレビ番組と同じである。

自分自身が最初の、そして唯一の観客であれ。 金曜の夜、一切の妥協を捨てた名盤の爆音を浴びながら、あなた自身の内なる衝動を思い出してほしい。「自分を信じろ」。その静かで力強い言葉だけが、あなただけの真実のストーリーを創り出すのだ。

『リック・ルービンの創作術』シリーズ (全3回)

「作る」のではなく「在る」。伝説的プロデューサーが明かす創造の源泉【『リック・ルービンの創作術』1/3】
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暗闇と退屈が「答え」を出す。インナーボイスを聴取する感覚遮断の技法【『リック・ルービンの創作術』2/3】
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