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子育てを外注するな【『イノベーション・オブ・ライフ』4/6】

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効率化の名の下に子供の成長機会を奪っていないか

私たちは子供の将来の成功を願うあまり、自分が与えられる最高の教育環境を用意しようと奔走している。共働きで多忙を極める現代の親にとって、限られた時間の中で子供の能力を最大化することは至上命題だ。そのため、最新の学習塾やプログラミング教室、スポーツクラブなど、各分野の専門家に教育を委ねることは、非常に合理的で費用対効果の高い投資に思える。

しかし、習い事でスケジュールを埋め尽くし、プロの指導者に教育を丸投げすることで、子供は本当に自立した強い人間へと育つのだろうか。親である私たちが「効率的な教育」という名のもとに、実は子供が本来経験すべき最も重要なプロセスを外部に委託し、成長の機会を根本から奪い去ってしまっているとしたらどうだろうか。親の愛情が、無意識のうちに子供の能力を空洞化させている可能性について、私たちは立ち止まって考える必要がある。

デルを空洞化させたアウトソーシングの罠

『イノベーション・オブ・ライフ』著者でハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンは、この教育における深刻な問題を、企業の「アウトソーシング」の失敗例を用いて鮮やかに説明している。同氏が引き合いに出すのは、かつて世界一のパソコンメーカーであったデルと、台湾のメーカーであるASUS(エイスース)の関係である。

当初、デルは純資産利益率(RONA)を向上させるという財務上の正当な理由から、マザーボードの製造という単純な工程をASUSに委託した。これによりデルはコストを削減し、利益率を向上させることに成功した。味を占めたデルは、続いてパソコンの組み立て、さらにはサプライチェーンの管理や設計までも、次々とASUSにアウトソーシングしていった。財務諸表上の数字は短期的には劇的に改善したが、最終的にデルの内部には「自社でパソコンを作る能力」が全く残っていなかった。結果として、あらゆる工程の能力を吸収したASUSが独自のブランドを立ち上げ、デルの強力な競争相手として立ちはだかることになったのである。

目先の効率を優先して中核となる能力を外部に委託することは、組織の根幹を自ら解体する行為に他ならない。

挑戦と失敗を学ぶ「経験の学校」を外注するな

同氏は、このアウトソーシングの悲劇が、現代の家庭における子育てにもそのまま当てはまると警告している。同氏の理論によれば、人や組織の能力は「資源(持っているもの)」「プロセス(やり方)」「優先順位(価値観)」の三つで構成される。親はつい、優れた教材やコーチといった「資源」を与えることばかりに気を取られ、それを外部から調達することで教育を果たしたと錯覚しがちだ。しかし、人生において直面する複雑な問題を解決し、困難を乗り越えるための「プロセス」や「優先順位」は、そうした外部の効率的なプログラムからは決して学ぶことができない。

子供が真の能力を獲得するのは、自ら困難な課題に直面し、失敗し、そこから立ち直るという「経験の学校」に入学したときだけである。親が先回りして障害物を取り除いたり、問題解決を外部の専門家に丸投げしたりすることは、子供がこの経験の学校で学ぶ機会を奪うことを意味する。それはまさに、デルが自らの製造能力をASUSに委譲してしまったのと同じ構造だ。知識という資源は豊富に持っていても、自分の頭で考え、失敗から這い上がるプロセスを持たない子供は、変化の激しい社会において非常に脆弱な存在となってしまうのである。

手を差し伸べるのをやめ、共に失敗する時間を確保せよ

あなたが今、子供の将来を案じるあまり、彼らのスケジュールを無数の習い事で埋め尽くそうとしているのだとしたら、その投資は一度見直すべきかもしれない。子供の能力を真に伸ばすために親がなすべきことは、手っ取り早い解決策や完璧な指導者を外部から調達してくることではない。子供が困難な課題にぶつかったとき、すぐに手を差し伸べるのをグッと堪え、彼らが自力で葛藤し、失敗する時間を隣で見守り続けることだ。

そのための実践的な一歩として、正解のない複雑な課題に家庭内で取り組む機会を設けてみてはどうだろうか。たとえば、ボーネルンドのマグ・フォーマーのような、自由度が高く試行錯誤を要する知育玩具をリビングに置き、子供が思い通りにいかずに癇癪を起こしたとしても、親が代わりを作ってあげるのではなく、共に悩みながら完成を目指すこと。効率を度外視し、泥臭い失敗のプロセスを共有するその時間こそが、いかなる外部機関にも外注できない、親にしか提供できない最高の「経験の学校」となるはずだ。

『イノベーション・オブ・ライフ』シリーズ (全6回)

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