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等しく愛するマネジメント【『LOONSHOTS』3/6】

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華やかな革新者だけを持て囃してはいないか

企業が新たな成長の柱を見つけるために新規事業のプロジェクトチームを立ち上げたとき、社内の空気はどのように変化するだろうか。多くの場合、経営陣は次世代のイノベーションを担う彼らをエースとして遇し、最新のオフィス環境や潤沢な予算、そして自由な裁量を与える。メディアもまた、既存の枠組みを打ち破ろうとする彼らを華やかな革新者として取り上げる。私たちは無意識のうちに、新しいものを生み出す人間こそが優秀であり、既存のルーティンワークをこなす人間は彼らを支えるための裏方に過ぎないというヒエラルキーを組織内に作り出してしまうのだ。

しかし、この新規事業部門への過剰な期待とえこひいきが、かえって組織全体のイノベーションを完全に阻害する原因になっているとしたらどうだろうか。日々の地味な業務で確実に利益を出し、新規事業の赤字を補填している既存部門のメンバーたちは、やがて強い不満を募らせていく。私たちが良かれと思って行っている革新者への特別扱いは、本当に組織を前進させる力になっているのだろうか。

カリスマの寵愛はなぜ組織を壊すのか

『LOONSHOTS<ルーンショット>』著者で物理学者・起業家のサフィ・バーコールは、未知のアイデアを探求する芸術家と、既存事業を確実に遂行する兵士を物理的に分離した上で、リーダーはその両者を等しく愛さなければならないと強く警告している。どちらか一方をひいきすることは、組織の動的平衡を完全に破壊し、企業を内部から腐敗させて破滅へと追いやるからだ。

この原則を無視して大失敗を犯した最も有名な例が、若き日のスティーブ・ジョブズである。同氏は画期的なマッキントッシュの開発チームである芸術家たちを海賊と呼んで熱狂的に愛し、オフィスの屋根に巨大な海賊旗を掲げさせた。一方で、当時のアップルの売り上げのほぼすべてを稼ぎ出していたApple IIのチームである兵士たちを退屈な官僚だと公然と見下し、冷遇したのである。その結果、社内には深い分断が生まれ、優秀なエンジニアは次々と去り、ジョブズ自身も自らが創業した会社から追放されるという結末を迎えた。

異なる基準で等しく敬意を払えているか

リーダーが芸術家と兵士を等しく愛するとは、両者に全く同じ扱いをするという意味ではない。むしろその逆である。両者がそれぞれに最高のパフォーマンスを発揮できるよう、全く異なる管理手法と評価基準を用いながら、人間としての敬意は等しく払うという非常に繊細なマネジメントが求められるのである。

芸術家たちには、失敗を許容し、リスクを取ってクレイジーな実験を繰り返すための自由を与えなければならない。彼らを短期的な利益や細かい数値目標で縛り付けることは、創造性を損なう行為である。一方で兵士たちには、リスクを最小化し、納期と品質を厳守して利益を最大化するための厳格なシステムと効率的なツールを提供する必要がある。彼らに向かって失敗を恐れず挑戦しろと説教することは、現場に無用な混乱をもたらすだけだ。全く異なる手段を与えながらも、組織への貢献度は完全に同等であると継続的にメッセージを発し続けること。それこそが、両者を等しく愛するということなのだ。

両者が互いの仕事を尊重する土壌を作れるか

あなたが今、革新的なアイデアを生み出そうと奮闘しているとき、それを冷ややかな目で見る既存部門の同僚を、想像力のない古い人間だと見下してはいないだろうか。あるいは、あなたが既存事業の屋台骨を支えているとき、新規事業のメンバーを、利益も出さずに遊んでいるだけの道楽者だと軽蔑してはいないだろうか。私たちが組織として真のブレイクスルーを果たすためには、どちらか一方が上という誤ったヒエラルキーを捨て去り、一見すると対立する両者の役割が、組織の生存において完全に等価であるという事実を受け入れるマインドセットが不可欠である。

自分とは全く異なる価値観を持つメンバーの存在意義を認め合い、周囲の才能を増幅させるリーダーシップを学ぶための実践書として、リズ・ワイズマンの『マルチプライヤー: メンバーの才能を開花させる技法』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。芸術家の創造性と兵士の規律、そのどちらが欠けても組織は機能しなくなる。両者の違いを深く理解し、互いの仕事に心からの敬意を払うこと。その成熟した態度の連鎖こそが、分断された組織を再び一つに結びつけ、持続可能なイノベーションを生み出す確かな土壌となるはずだ。

『LOONSHOTS』シリーズ (全6回)

組織の停滞を文化のせいにするな【『LOONSHOTS』1/6】
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革新と安定の両立という幻想【『LOONSHOTS』2/6】
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天才リーダーの直感が組織を滅ぼす【『LOONSHOTS』4/6】
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社員数150人の壁を越えられるか【『LOONSHOTS』5/6】
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結果ではなくプロセスを磨け【『LOONSHOTS』6/6】
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