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泥まみれの現実から目を背けていないか【『Better Way』6/6】

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抽象的な戦略を語ることで満足していないか

ビジネスパーソンとしてキャリアを積み、マネジメントの立場に近づくにつれて、私たちは現場の泥臭い実務から少しずつ距離を置くようになる。新しい事業ビジョンを描き、最新のテクノロジートレンドを議論し、全社的なマーケティング戦略を立てる。抽象的で高度な議論に参加することこそが、自らの市場価値を高め、知的なビジネスパーソンとして振る舞うための近道だと感じられるからだ。

しかし、綺麗な会議室でどれほど洗練された戦略を語り合おうと、それだけで組織が強くなることは絶対にない。多くのリーダーは、現場で起きている日常的なエラーや、泥臭いトラブルの解決を自分の給料に見合わない低レベルな仕事だと見下し、部下に丸投げしてしまう。そして、現場の実態から遊離した机上の空論ばかりを振りかざし、組織を深い機能不全へと導いていくのである。

出荷場に降りていくことを恐れるな

MITスローン経営大学院教授のネルソン・P・レペニングおよびドナルド・C・キーファーは、著書『There’s Got to Be a Better Way』の締めくくりにおいて、真の改善をもたらすためには組織のコアとなる仕事に直面する勇気を持たなければならないと強く訴えかけている。それは、製品がトラックに積み込まれる出荷場や、顧客のクレームが鳴り響くコールセンター、あるいはシステムのバグが山積している開発ルームなど、仕事が実際に滞り、うまくいかなくなっている最前線に自ら足を踏み入れることを意味する。会議室に上がってくる綺麗に加工された報告書を読むだけではなく、システムの根本的な欠陥が露呈している現場の生々しい実態を自分の目で確かめることが求められているのだ。

同氏らによれば、経営幹部やマネージャーは、この出荷場に降りていくことを本能的に嫌がる。なぜなら、そこには美しい戦略など存在せず、無秩序で、埃っぽく、自分の予測を超えた複雑な問題が山積みになっているからだ。現場のリアルなエラーに直面することは、自分たちの立てた計画がいかに脆弱であったかを認めざるを得ない、非常に痛みを伴うプロセスなのである。

本当のリーダーシップは退屈な配管工事の中にある

しかし、組織を本当に動かし、劇的なパフォーマンスの向上をもたらすのは、カリスマ的な演説や革新的なビジョンの提示ではない。現場に降り立ち、どこで情報が止まっているのか、なぜこの作業に時間がかかっているのかという、組織の配管工事のような、ひたすら地味で退屈な問題を一つひとつ解きほぐしていく作業の中にあるのだ。問題の根源を特定し、ワークフローを再設計する作業は、決して華やかで称賛を浴びるようなものではない。しかし、その泥臭い介入の積み重ねこそが、確実に組織の生産性を底上げしていくのである。

ダイナミック・ワーク・デザインを組織に定着させるためには、リーダー自らが自分の手を汚し、現場のスタッフが抱えている小さな摩擦をシステムの問題として共有し、改善を主導する姿勢を見せなければならない。現場の泥臭い現実を直視し、そこに介入する勇気を持たない人間に、組織の未来をデザインする資格はないのである。

美しい戦略を捨てて泥まみれの現実と向き合えるか

あなたが語っているその戦略は、現場の最前線で起きているリアルな問題と結びついているだろうか。私たちが組織の真のポテンシャルを引き出し、圧倒的な成果を生み出すためには、綺麗な会議室への執着を完全に打ち砕き、誰もやりたがらない泥臭い現実の中に飛び込むマインドセットが不可欠である。どれほど美しい理論を学んでも、現場の摩擦を解消しなければ何も始まらない。上層部からの指示待ち人間を生み出すトップダウンの組織から抜け出し、変化に強い自律的な組織へと進化させる鍵は、常に現場の泥の中に隠されている。

経営理論や美しい戦略では決して乗り越えられない、胃がよじれるような組織運営の残酷な現実と向き合う覚悟を突きつけるバイブル、ベン・ホロウィッツの『HARD THINGS』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。抽象的な理想論を捨て、まずは現場で起きている小さなエラーの前に立ってみること。その泥臭い一歩を踏み出したとき、それが真のリーダーシップの始まりとなるはずだ。

『There’s Got to Be a Better Way』シリーズ (全6回)

終わらない火消しを仕事と呼ぶな【『Better Way』1/6】
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壮大な改革という現実逃避【『Better Way』2/6】
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複雑さを有能だと勘違いしていないか【『Better Way』3/6】
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完璧な計画が常に失敗に終わる理由【『Better Way』4/6】
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終わらないマルチタスクという幻想【『Better Way』5/6】
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