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終わらない火消しを仕事と呼ぶな【『Better Way』1/6】

kotukatu
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終わらないトラブル対応を仕事と呼んでいないか

ビジネスの現場において、私たちはしばしば予期せぬトラブルやクレームの対応に一日を奪われることがある。納期遅れの穴埋め、システムのバグ修正、あるいは連絡ミスの尻拭いなど、その種類は多岐にわたる。本来やるべき重要なタスクを計画していたにもかかわらず、次から次へと発生する火事を消して回るだけで夕方を迎えてしまう。そして私たちは、今日も一日必死に働いたという強い疲労感とともに、なんとか危機を乗り越えた自分を正当化してしまうのだ。

しかし、このような火消し業務に忙殺されている状態は、本当に生産的な仕事をしていると言えるのだろうか。トラブルを迅速に解決する能力は確かにビジネスにおいて重要かもしれない。だが、同じような問題が繰り返し発生し、常に誰かが火消しに走り回らなければならない環境をそのまま放置しているのだとすれば、それは仕事をしているのではなく、単に崩壊しかけたシステムの中で終わりのないサバイバルゲームをやらされているに過ぎない。

ヒーロー扱いが組織を機能不全に陥らせる

MITスローン経営大学院の教授であるネルソン・P・レペニングとドナルド・C・キーファーは、著書『There’s Got to Be a Better Way』の中で、この終わらない火消しの連鎖を生み出している最大の原因が、皮肉にも組織の評価システムそのものにあると指摘している。多くの企業では、燃え盛るトラブルの火を見事に消し止めた人間を、頼りになる優秀な人材としてヒーローのように称賛する文化が深く根付いているのである。

危機を救った人間が評価され、感謝される。一見すると素晴らしいことのように思えるが、この文化には組織を腐敗させる恐ろしい罠が潜んでいる。火消しが評価される組織では、誰も火事そのものが起きないようにするための地味で根本的な防火システムの構築にエネルギーを割かなくなるのだ。問題の根源を絶つよりも、問題が起きてから派手に解決したほうが周囲からの評価が高くなるため、組織全体が無意識のうちにトラブルの発生を待ち望むという異常な機能不全に陥ってしまうのである。

根本的な設計図から目を背けるな

両氏が提唱するダイナミック・ワーク・デザインというアプローチは、このヒーロー願望を捨て去り、仕事が実際にどのように行われているかという根本的な設計図に冷静に目を向けることを要求する。トラブルが発生したとき、誰がミスをしたのかと犯人を探したり、気合で乗り切った担当者を褒め称えたりするのをやめるのだ。その代わりに、なぜその情報が共有されなかったのか、なぜその工程でエラーが起きる構造になっているのかという、無機質で物理的なシステムへの問いへと完全に変換しなければならない。

本当に優秀な組織とは、トラブル対応の速い組織ではない。息を呑むほど退屈で、何も劇的な事件が起きないように緻密に設計された組織である。私たちは、困難な状況を個人の努力で乗り切るというドラマチックなストーリーを手放さなければならない。現場で起きているエラーの根本原因まで遡り、ワークフローそのものを設計し直すという、そのひたすら地味で冷徹な作業の中にこそ、真の生産性向上への道が開かれているのだ。

燃え盛る炎から離れてシステムを修復できるか

あなたが今日も必死に取り組んでいるそのトラブル対応は、本当に根本的な解決に繋がっているだろうか。目の前の火を消すことに満足し、また明日も同じ場所から火が上がるのを待ってはいないだろうか。私たちが終わらない火消しのループから抜け出すためには、危機を乗り越えたという一時的な達成感を捨て去り、エラーを生み出し続けるシステムそのものを解体するマインドセットが不可欠である。

個人の努力や部分的な改善を否定し、システム全体に潜む本当のボトルネックを特定して全体の流れを最適化する理論を小説仕立てで解き明かした歴史的名著、エリヤフ・ゴールドラットの『ザ・ゴール』へと手を伸ばしてみてはどうだろうか。目の前の火を消す手を一度止め、発火源の構造に目を向けてみること。その一冊が、トラブル対応という名の終わらないゲームからあなたを静かに解放してくれるはずだ。

『There’s Got to Be a Better Way』シリーズ (全6回)

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